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FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

やはり任天堂は立っているステージ、戦略のルールが違いすぎる

任天堂の経営方針説明会の質疑応答はいつも非常におもしろくて、参考になります。

過去にも経営方針説明会の質疑応答をネタに以下のエントリーを書きました。

さて今年の質疑応答をみて感じたことは任天堂がたっているステージがあまりにも他のゲーム会社と違いすぎる点です。現在のゲーム業界の問題に関しては、切込隊長の「ネットビジネスの終わり」に一章を割かれて詳しい説明があります。

ネットビジネスの終わり (Voice select)
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おすすめ平均
starsえーっと。
starsあまり得られる示唆は無い
stars製品&マーケティング=ビジネス
stars想像以上にネットビジネスのことが書いてなかった

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題名に反してネットビジネスのことはほとんどかかれていない本なのですが、ゲーム業界にとっては現在の状態をわかりやすく分析しています。それを端的に表現すると以下のようになるかと思います。

  1. 開発費の高騰によりHDのゲームのラインを複数個持つことが難しくなっている。しかもHDゲームは作成に2年くらいかかるので、資本を投下してから回収できるまでスパンが長く経営が圧迫される。海外はすでに業界の再編がほぼ完了しており、EAやActivisionのような大企業はHDゲームのラインを複数本ねらうことができす。
  2. コンテンツがヒットするかどうかを見積もることは非常に難しい。しかし、安定を求めて続編やニッチをねらった場合、想定以上のヒットはなく、結果として市場が縮小する。
  3. 日本はゲームの世界売り上げの20%程度を占めるが、ゲームは文化に依存する部分は強いため、日本向けに作ったゲームを世界で売るのは一般的にかなり難しい。

さて、上記の問題に対して、任天堂の考え方は非常におもしろいです。以下は岩田社長が「任天堂のビジネスの今後について」を質問された時の回答です。

我々のビジネスというのは、皆さんが、「そんなことやって常識としてうまくいくんだろうか」と思うようなものが、何かのきっかけでポンっと化けた時に大きく成長する、大きく伸びる余地のあるビジネスなんです。

 ちょっと昔の話ですが、「ポケモン」が世界中で売れると誰が思ったでしょうか。「脳トレ」が世界中で売れると誰が最初から感じたでしょうか。「Wii Fit」がこんな商品に化けると、最初から見通せていた人はいったい世の中にどれだけいらっしゃったでしょうか。「トモダチコレクション」が初回受注10万本であったということは、「10万本あればしばらく大丈夫だ」と日本中の専門家の皆さんがそう考えられたということなので、「そういうことを打ち破るものをどう作るか」なんですが、すべて計算して作ることはできません。

 一方で私は公開企業の経営者ですので、一定以上の打率でそれを実現し、増収増益を目指していく責任があるわけです。私自身は、いろいろなところで「任天堂は後手に回っているんじゃないか」というご批判があるのは当然理解しているんですが、一方で、あらゆるところに先手を打つほど任天堂にリソースはあるのかと思うわけです。任天堂は自分の得意なことに集中してやっていませんと、人数の多い会社ではありませんので、あっちもこっちも、こういうことがはやりそうだからここに手を打ち、あそこでこれからはこうだ、という人がいたからそのための準備をし、なんてことをやっていると、あっという間にパワーが分散してしまいます。むしろ、「そんなことうまくいくの」と人が思うかもしれないことに、実はひそかに、しっかりとエネルギーをかけて、気がついたらそれが化けていたという状況を作るのが私の仕事です。それを一定以上の打率で成し遂げられていれば任天堂を認めていただけるし、成し遂げられなければ、「あの時が曲がり角だった」と言われると思うんです。

 当然、私たちは次々と作っている商品それぞれに、「どうせ作るなら化ける可能性があるものを作ろうよ」と考えて進めています。そうでなければ、「トモダチコレクション」を3年以上開発し続けるなんてことをするわけがないのです。でも、では3年以上かけてゆっくり、じっくりと開発したら全部「トモダチコレクション」のようになるかというと、ならないわけで、その目利きをするのが私や宮本のすごく重要な仕事で、その目利きの打率が今のところある程度良いので、今の任天堂の結果があるんだと思っています。ですから、過去何年かの私たちの目利き力を信用していただいて、任天堂はこれからも化ける可能性のあるソフトを提案していくんだということについて信頼していただく以外にマーケットの皆さんにメッセージを出せないわけです。

このような考え方ができるのは、任天堂が巨大な社内留保を備えており、資本的に全く問題がない状況だからこそなわけですが、しかし全く任天堂が他のゲーム会社とは異なるスパン、異なる感覚でビジネスを展開していることがわかります。

そんなわけで、最近Wiiが失速してるとか、ゲームもiPhoneの時代だ、とかいう人が多いですが、基本的なルールを理解できていないことが多いので、あんまり気にしない方がいいと思います。iPhoneの時代だに対する以下の岩田社長のコメントもおもしろいです。

同じことは、iPhone、iPod touchとの話についても言えまして、報道等を読みますと、「DSはiPhoneや他社さんのゲーム機に押されているからてこ入れするんだ」と書いてあるんですが、今日実際に資料を見ていただいて、確かに、日本の市場全体にDSの最盛期の「どこまでいっちゃうんだ」というような勢いがないことは事実ですが、DSが市場の中で存在感を減らしているということは全くないし、世界中で存在感が増している中で、なぜそう言われるのか分かりません。それはどちらかというと先に、「任天堂はアップルと戦ってることにしたい」というお考えの方がいて、その考えに基づいて断片的な情報をつなぎ合わせてストーリーを書かれるからああなると感じますので、そういう流れについては、私は違和感があります。それは、今日実際に説明を聞いていただいた皆様の中には十分ご理解いただけた方もいらっしゃると信じたいです。