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FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

「メディア化する企業はなぜ強いのか?」を読む限り日本でソーシャルメディアマーケティングは難しすぎる

「新世紀メディア論」の内容が記憶に残っていたので、コバヘンこと小林弘人氏の最近の著書「メディア化する企業はなぜ強いのか?」という本を読んでみました。いろいろ噂に聞いていたエンゲージインフルエンスなどの単語が満載で、今のソーショルメディア広告業界って本当にいろいろ迷走してるんだなというのがわかる本です。横文字多すぎです。これほどの人が取り留めもないまとめしかできない時点で、ソーシャルメディアの取り扱いというのが企業にとってどれほど難しいか、というのがわかると思います。たぶん、この本を読んで普通の広報担当は、「ソーシャルメディアでがんばろう」というより、「やべー、炎上しない程度にやってお茶をにごそう」という感想を持つ人が多いと思いますし、たぶんそれが普通の感性です。

メディア化する企業はなぜ強いのか? 〜フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書)メディア化する企業はなぜ強いのか? 〜フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書)
小林 弘人

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ソーシャルメディアの成功の秘訣なんてそもそもない

いや、本の内容としては非常に手堅くまとめられており、ソーシャルメディアマーケティングの現状を理解するにはとてもいい本だと思います。ただ、この本を読む限り、ソーシャルメディアを効果的に利用するということは、極めて属人性が高いなかなか組織内でオーサライズしにくい能力に依存しているのように感じるのです。それは主に「バランス感覚」と「キャラクター」という能力です。つまり、出来る人は感覚でできるけど、できない人はたぶんやらないほうがいい類のものです。それって、企業では容認できないコストですよね。
いや、もちろん幾つかの企業はソーシャルメディアマーケティングで大成功しています。特にマイクロソフトのチャンネル9の成功は比類のないもので、ハッカーにとって今までヘイトの対象でしかなかったマイクロソフトを取り巻くネットでの評価を一変させた事例は眼を見張るものがあります。ただ、この成功も本書に記載されているように、ロバート・スコーブルという天才的広報マンがいたから可能だっただけで、実際にこのような奇跡的な成功例の数倍の失敗事例があります。

炎上リスクが高まっている

この難しさの原因はいくつかありますが、日本で今もっともアクセスがあるメディアである「2chまとめブログ」の存在を抜きにして語ることはできません。2chまとめブログは、2chでの内容が一度でもどこかの2chまとめブログにまとめられると、大量の他の2chまとめサイトがそのサイトからコピーを作成します。2chまとめサイト自体はそのスレの著作権を保持していないので、だれもコピーを止める権利はありません。一つのスレのまとめを多くのまとめサイトでみるのはそういう理由です。
これらのサイトはアクセス量が多いので、一度掲載されると多くのブックマークやtwitterからの引用が着いてしまいます。その結果、その僅かな失敗事例が、他の優秀なコンテンツを差し置いて関連するキーワードのGoogleなどの検索順位で上位に来てしまいます。結果として、炎上や他人の失敗の方が注目を集めることになってしまい、この失敗をソーシャルマーケティングの成功で再度覆し、Googleの検索順位をひっくり返すのは容易ではありません。つまり、ソーシャルメディアマーケティングでは一度の失敗が命取りであり、一度の失敗で発生した事象を覆すのに必要な労力が企業にとってなかなか受け入れられるものではありません。

企業の広報担当が学べる唯一のこと

という訳で、結局世の中によく見られるソーシャルメディアマーケティングはドメインをきれいに分け、失敗してもその失態が期間限定で済む、将来的に他の担当者に引き継ぎしたときに遺恨を残さないですむような、一時的なキャンペーンばかりがFacebookやTwitterで見られます。ただ、本書にも書かれていますが、そのような期間限定の取り組みってほとんど効果がないはずなのです。なぜなら本腰を入れてないことが一瞬で伝わるので。今まで一時的にFacebookやTwitterで話題になったネタがどうなったかを考えればわかりやすいと思います。良くハッシュタグとかFacebookでいろいろ期間限定のネタ的なポストを見かけますが、あれってほとんど無視されてますよね。たぶん、成功への道って地道に積み重ねていくしかないのだと思います。その積み重ねなしでキャンペーンだけやって成功する訳無いですよね。
まぁ、そんな訳で、この本を読むことで、企業の広報担当が学べることといえば「ソーシャルメディアマーケティングで劇的な効果を上げる」と、言ってくる怪しげな人or企画にだまされないで済む、という点に尽きるかと思います。問題は、稀に本当にすごい人がいるので、そういう人まで怪しげな目で見てしまうことですが、まぁ、そんな人はすごく稀だし名前も売れていると思うので、もう全員怪しい目で見て実害ないんじゃないのでしょうか。