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FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

Appleとマイクロソフトのデザイン部門のトップ(ジョナサン・アイブとサム・モロー)のインタビューとWindows 8の大きな一歩

Appleのデザイン部門のトップであるジョナサン・アイブのインタビューが掲載されるということで非常に楽しみにしていた今月号のBRUTUS Casa。ジョナサン・アイブがインタビューに応えることは非常に少ない(昔クーリエ・ジャポンの特集で読んだくらい)ので、2ページの記事でしたが読んで良かったと思う素晴らしい内容でした。他の特集も非常に面白く今月のCasaは買いだと思います。

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ジョナサン・アイブの強い言葉とデザイン哲学

詳しくはCasaを読んで欲しいのですが、僕が非常に印象に残ったのは、以下の言葉。

つまり会社の設立とはアイデアを実行するためにあるわけです。そして会社として実際にデザインをし、開発をして製造をはじめるわけです。それがものをつくるということの基本です。

どこか新しい、これまでと違うからといってそれが良いものだとは限らないのです。デザイナーとして私たちがやろうとしてきたことは新しいものや違ったものをつくろうというのではなく、ただより良く(=better)しようということです。

アップルのプロダクトラインを少数に絞り、iPhoneの表面のガラスやアルミのユニボディのMacBookなど素材開発から徹底して取り組む姿勢が現れている非常に強い言葉だと思います。Appleのプロダクトを作る姿勢はきちんと前を向いてます。この企業がプロダクトに対して前を向くというのは本当に難しいんですよね。
実はこのページを読みながら考えたのが、最近読んだもう一つの非常に面白い記事。Windows 8のデザイン担当のインタビューです。

Windows 8で採用されたMetro UIのデザイン哲学

以下のインタビューは本当に読む価値ありです。Windowsというほとんど陳腐化された、しかし世の中に依然として存在する巨人のデザインを立て直すという想像することも困難な仕事に挑んだWindows 8のデザイン担当サム・モロー氏のインタビューです。

僕はWindows 8が採用したMetro UIを高く評価していて、Metro UIはスマートフォン、タブレット、XBOX、PC、Webと分散したユーザーエクスペリエンスを統一する論理的にほとんど一つしかない解をMSは見つけたのだと思います。ざっと考えても以下のように優れている特徴が多いです。

  • HTML5と非常に相性がいいグリッドデザインである
  • 2次元で構成されるためGPUのサポートがなくても最低限の描画はできる。しかもGPUのサポートがあればベクターグラフィックが非常に活きてくる。
  • 今現在できることが一瞬でわかる。
  • グラデーションとか角丸とかアプリケーション内で実装する際に面倒になりがちな要素がない。
  • 非常にはっきりとしたデザイン哲学を感じるため、デザインの統一をはかるのがとてもやりやすい


ただし、周りのデザインの識者に聞くと、クリックやフリックなどに対するアフォーダンスが弱いという欠点もあるようですが、この部分はユーザーの慣れでなんとかなる部分なのではないかと思います。そして、MSにとって、最も重要な部分は上のインタビューでも書かれている通り、このMetro UIの持つデザインを統一させる強力なデザイン強制力にあるのではないでしょうか。

これは僕が考えつくデザインの仕事で、一番クールなものでした。そして間違いなく僕のキャリアの中で一番クールなものでもあります。今回、必ずしも壊してしまう必要のないWindowsを再デザインしました。Windowsには実績もあるし、偉大な存在です。そして世界の多くの部分を動かしています。だから今回の僕の仕事は、壊れてるわけでもない、ちゃんと動いているものをデザインし直すということであり、まだわからない未来に向けて何かをデザインするということでした。

つまり、Windowsという膨大な遺産をもつプラットフォームの過去と未来をつなぐためには生半可なデザイン強制力ではすぐに破綻することは眼に見えています。ただ、そのデザインの強制力という点でMetro UIは非常に優れていたのだと思います。

僕らは未来のモデルをデザインしつつ、同時に過去も捨てていないと言えるものを作りました。もしまったくの白紙で、「さあ何かデザインしろ」ってことなら、簡単です。でも、「ここに25年間のコードとパターンとインタラクションモデルなどなどがあり、未来のニーズとウォンツがある」っ言われて「さあ全部デザインしろ」って言われたら、デザイン的には一番ハードなチャレンジになります。未来を作り、同時に過去も引き継がなくちゃいけないんです。でも僕らはそれを成し遂げたと思っています。しかもエレガントに美しく、PC全体の遺産と可能性の両方を生かしながらデザインできたと思います。
あるときスティーブン(シノフスキー、WindowsとWindows Live担当のプレジデント)に言ったことがあるんです。「これ本当に大変なんですよ。両方残しながら、しかも美しくまとめるのって。」彼の答えは、「うーん、とにかくデザインすれば? そうすればただ、良くするだけだから。」まるで禅問答でした。

10年停滞したMSの大きな一歩

AppleとMSという二つの尊敬すべき企業のデザイン哲学の方向性の違いは非常におもしろいです。Appleは過去とのつながりに対して「より良くする」ということにフォーカスしています。一方、MSは「過去と未来をつなぐ」ということにフォーカスしています。
プロダクトとしては最終的にAppleが良いものができているのは現状は疑いようがないですが、僕自身はこれまで10年以上ほとんど進化のなかったWindowsというITの巨人がデザインに対して大きな一歩を踏み出したことを驚いています。もちろんAppleにそこまで追い込まれたというのはありますが、それでもこの一歩を踏み出せずに消えていった企業がいままでどれほど多かったことか。Windows 8のリリースはまだ先ですが、この偉大な仕事を成し遂げたチームにAppleのデザインチームに負けないくらいの称賛を送りたいです。

まとめ

奇しくもジョナサンアイブというAppleのデザイン部門のトップと、Windows 8のデザイン担当のインタビューが同時期に行われたのが印象的でした。そして、Windows 8での大きな一歩を讃えたいと思います。ご意見、ご感想などもしあれば、Twitterやっているので、@gamellaに送っていただければ。