読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

「閉じこもるインターネット」で描かれたインターネットの形を変えつつあるパーソナライズの未来

「閉じこもるインターネット」を読みおわった。レッシグがCODEにおいて提起した、サイバー空間においては「コードが法」であり、コードこそが我々の行動を決定づけるものであるという問題について、ついに僕達は真剣に考え始めるタイミングにきていると感じた。

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
イーライ・パリサー Eli Pariser

早川書房 2012-02-23
売り上げランキング : 6223

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
CODE VERSION 2.0CODE VERSION 2.0
ローレンス・レッシグ Lawrence Lessig

翔泳社 2007-12-20
売り上げランキング : 156005

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

パーソナライズの基礎知識

本書が問題としているのは、現在GoogleとFacebookが推し進めている「完璧なパーソナライズ」が完成した時にどのようなことが起きるかというポイントである。この本を読んでいるときに、まさにはてながマイクロアドをはてなブックマークのボタンに組み込み、トラッキングを行い、そのデータをマイクロアドに売却していたことが問題となったが、まさにこの問題と直結するテーマである。マイクロアドがトラッキングしたデータは、例えばあなたがイタリア旅行を検索したら、マイクロアドと提携した広告が表示されるサイトで常に旅行会社の広告が表示される状況となる。これは現在のインターネット広告の基礎技術であり、このターゲッティング無しに高クリック率の広告事業を展開することなどできない。
上記は広告の事例だが、原則、インターネットにおいて、我々の行動は大手のサイトであれば、何らかの形でトラッキングされていると考えて良い。これは閲覧するコンテンツにおいても同等である。
たとえば、GoogleのサイトならばGoogleに、FacebookであればFacebookに。その他、広告が掲載されているサイトであれば、その広告の掲載元に。GoogleがGmailという金食い虫を維持する理由がまさにこれで、Googleは是が非でも我々にメールアドレスのようなトラッキング可能なIDを組みたかった。よくGoogleはGmailは年に一回広告をクリックしてもらえば、やっていけるというようなことを述べているが、まぁ、これはこのトラッキング問題から目をそらすためのごまかしである。Googleは検索エンジン最適化の次のビッグトピックとして、パーソナライズがくることを早い段階から見抜いていた。そのためには常にどの環境でもユーザーがGoogleのアカウントにログインしてもらうことが望ましい。しかし、あまり個人向けサービスはGoogleは得意ではない、そこでGmailという検索技術とサーバのパワーが大きなアドバンテージとなるサービスを始める必要があった、と本では述べられている。In the Plexでの説明とだいぶ違うが、僕はたぶんどっちも本当のことを書いていると感じる。真実は常に多面的だから。

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へグーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
スティーブン・レヴィ 仲達志

阪急コミュニケーションズ 2011-12-16
売り上げランキング : 680

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

我々が密かに影響を受けているパーソナライズ

さて、多くの人は意識していないが、今現在、Googleにログインした状態で、ある社名を検索した時、あるユーザーはその会社の投資情報や株価がトップの検索結果となり、あるユーザーは環境問題のニュースがトップとなる。もちろん、これはGoogleがその人の過去の行動・検索履歴から、よりその人が魅力を感じるコンテンツを上位に配置しているわけだが、このことに違和感を感じるか、それともこれをGoogleがよくやったと感じるかは個人でかなり差があると思う。
Facebookも同様に、よりその人が「いいね!」を押しやすいコンテンツを優先的に表示するようにしている。たとえばあなたが、ある特定のニュースサイトや人物の記事に偏った「いいね!」をつけていれば、そのうちFacebookはあならにその情報ばかりを提示するようになる。
このような技術をパーソナライズと呼び、ユーザーの満足度を上げ、滞在時間を伸ばし、再びユーザーがサイトを訪れるようにするための基本技術であるのだが、この技術が行き着く先は、全てが自分にとって「いいね!」を押すべき情報に溢れ、何も驚きのない、自分にとって居心地の良い情報に囲まれた世界だ。たとえば、そのような環境では自分にとって興味のない悲惨な出来事は存在しないことになるし、もしかしたら、真実とは程遠い記事が並ぶようなことになるかもしれない。そう、まさに「ネット・バカ」で問題提起された、自分にとって都合のよい情報を摂取し続けることで快感物質が垂れ流しになる状態である。

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていることネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー 篠儀直子

青土社 2010-07-23
売り上げランキング : 21291

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「閉じこもるインターネット」に描かれたインターネットの未来

ぼくはこの「閉じこもるインターネット」、「In the Plex」、「ネット・バカ」をインターネットの未来を考える上で今読む価値のある3冊の本だと思う。それは、つまりインターネットの未来の形が、このまま何らかのアクションを起こさない限り「完璧なパーソナライズ」が行われた世界になることがほぼ確定したからだ。「In the Plex」、「ネット・バカ」についてのエントリーを以下に示す。

なぜなら、これが収益の面で最も良い手法であるからである。他の企業がパーソナライズを採用している以上、それに対抗する企業がその手法を採用しないのは、ドッグイヤーのインターネット業界において即死につながる。唯一GoogleのDon't be evilという社是がこれを避ける可能性があったが、その望みも失われた。むしろGoogleがこの道を今はもっとも邁進している。
では、われわれはどうするか。それはどのようなフィルターが自分に行わているかを自分が知ることである。レッシグがCODEにおいて「コードにより行われる規制に対して、政治的な対応ができるのは規制が見える場合のみだ」ということを述べたが、まさに現在行われている規制を僕達は知る必要がある(もしくは運良く高木先生が気づいて、目をつけるという例外事例もある)。ただ多くの場合、我々はそれをしることができない。例えばFacebookが行なっているパーソナライズの中身を我々は本当にどうすることも出来ず、ただそれに従うのみになる。あなたがどんな友だちと将来仲良くなっていくかをFacebookが決めることができると考えればこの技術の恐ろしさと可能性がわかると思う。どうすることもできないかもしれないが、何が行われているかを知り、考える上で「閉じこもるインターネット」は良い道標になると思う。

まとめ

「閉じこもるインターネット」を読んで感じたこと、インターネットの未来について考えてみました。ご意見、ご感想などもしあれば、Twitterやっているので、@gamellaに送っていただければ。