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FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

本で読んだライフハックも自己啓発も自分に影響与えないぞ問題について

ライフハック的なネタは僕も大好きなのですが、ライフハックに凝ってもなかなか効率もあがらないし、なんだか成果もでないし、ライフハック意味ねーな、という感想を見ることがあります。僕もライフハック本から、自己啓発的な本まで好きでいろいろ読んでいたのですが、まぁ、この手の本が好きな人はうすうす感じている、「ライフハックも自己啓発も自分に影響与えないぞ問題」について考えてみたいと思います。

ライフハックや自己啓発といえば、僕のブログでもたびたび取り上げていた勝間和代さんも本を出さなくなって久しいし、ライフハックも老舗のWebサイト「ライフハッカー」などを除けば、すでにそれ自体をネタにした本というのを見かけることは少なくなっているように思います。その後、一時的に流行った「ノマド」も下火で、最近だと「ブログで食べる」という小ネタなどはありますが、もうライフハック自体をネタにすること自体が飽きられているのが近況かと。

米国では、このあたりどうなっているかというと、ライフハックネタというのは、今でもそれなりに人気のようでして、そのなかでもリモートワークに関連する議論は最近でも非常にホットでした。Railsの開発元である37signalsのメンバーが出版した以下の本などもリモートワークを題材にした本で、正直リモートワークなどは日本ではあまり想像できない領域に進んでいる印象を受けます。このあたりは、米国在住の友人にもちょっと聞いてみたいところ。

このリモートワークがライフハックのメインテーマになるというのは、昔書いた以下のエントリーでも書きましたが、至極自然なことなのです。

オフィスで生産性をあげても、大量の仕事が降ってくるだけで、自由時間は全く増えないのですね。よって、在宅勤務をまずは勝ち取る必要があり、在宅で可能な限り少ない時間で最大の成果をあげることを模索する必要があるのですが、もうこの時点で日本企業だと無理じゃありませんかね?すくなくとも僕は在宅勤務を勝ち取れる気はしません。

このあたりは本家ライフハッカーの方でもおもしろくて、最近だと以下のエントリーが好きでした。だいたいリモートワークの文脈を意識してますよね。

つまり、リモートワークを勝ち取った瞬間、ライフハックにより能率を上げることがそのまま自分の時給になる。そのような状況を作り出すことが「週4時間働く本」では、まず第一歩と記載されているのですが、その第一歩を勝ち取る部分が、普通の日本企業では結構無理めです。オフィスで時間拘束されている場合は、能率上げても、基本的には年次の評価で反映されるかどうかですから、日本ではこのあたりはもう割り切っている人も多いと思います。もちろん会社の成長が自分の成長とイコールのようなベンチャーとか経営者、自分の効率がそのまま時間短縮につながるフリーランサーとは別の話です。

ただ、日本の構造でも、ちょっと視点を変えるとおもしろいものが見えてきます。ライフハックでも、なんでも制度や構造にあったものに作り変えることで、はじめて意味のあるものになるのですから、海外から持ってきたものがそのまま通用すると思っていること自体がおかしいのかな、と。

日本で、働き方を変えたり、テクニックを取り入れる言わば「短期型ライフハック」とでも言うべきネタがなかなか自分に影響を与えない構造的な理由は以下の2つと考えています。

  • 日本の企業の収入規則が転職には不利にできている
  • 転職が不利だったり、一回の失敗のリカバーのコストが高いので、最初に投資したサンクコストを、あれは「無駄だった」、「失敗だった」と割り切ることが難しい

米国のように、職務に対して給与支払いの相場が形成されており、転職も自分のキャリアにとって不利にならない社会では、よい給与・条件の職場があったら、例えば1、2年働いて、より良い職場に転職するというのも通常のキャリアプランとしてワークすると思います。しかし、日本でそれをやると、多くの場合は重要な経験を積むことが出来ず、転職がきつくなる30代になって、厳しくなることが多い。転職を複数回重ねることでキャリアアップしている人もいますが、どちらかというそういう人はレアで、肩書to肩書の転職が多いので、この最初の肩書をきちんと取ることが重要になってきます。

なので、キャリアの前半を投資銀行やコンサルタントでスタートして、通常なら日本企業の部長や役員クラスではないと、積むことができない経験をキャリアの前半で積み、そこから転職をスタートすることで一気にショートカットする人がいる。これは、一度肩書がつくと、次の転職でもその肩書クラスを狙えるという転職の慣習を使ったハックで、まぁ、これこそ本当の意味でもライフハックだと思うのですあ、まぁ、これは一部の限られた人にのみできる技ですので、あまり考えないことにしましょう。

そんなわけで、日本では、海外から持ってきた短期型ライフハックではなく、日本の構造的特性を考慮したライフハックが必要なのですが、そのあたりを考慮したライフハックネタが必要となってきているわけです。ただ、日本にフィットするライフハックはかなり息の長い話になりそうです。ざっと上記の日本的な構造から考えると、もっともフィットするライフハックと読んでいいのかわかりませんが、働き方は以下の様な感じでしょうか:

  1. 5年から7年かけて「役職」がつくまで同じ会社で働く。ベンチャーだと会社の成長が早いとここが短縮できる。
  2. そのあいだも自分の会社のスキルとは別に他のスキルや知識・情報を仕入れておく
  3. 「役職」がついたら、その「役職」の仕事を数年経験して、おなじ役職がつき、よりよい条件の会社に転職する
  4. 転職した会社で5年から7年かけて次の「役職」がつくまで働く
  5. そのあいだも自分の会社のスキルとは別に他のスキルや知識・情報を仕入れておく
  6. だいたい15年くらいかけてはたらいたらその分野では最高の人材になっているはずなので、そろそろ最終形を考える。

うわー、書いてみて感じましたが、めちゃ机上の空論ですね。そもそもハックというものでもないです。なんていうのでしょうか、こういうの。ライフプラン?しかも、長期的なプラン立てても、それがワークするかは短期的な決断の積み重ねなわけで、全体として振り返ってうまく行ったというケースはあっても、それが計画のおかげなのか、偶然の産物なのかジャッジすることは難しそうですし、こんな長期的な話をまとめても、なかなか本を出しても売ることは難しそうです。

そんなわけで、巷であふれる短期効率追求型のライフハックが自分の人生にあまり影響与えない問題に関しては、「日本の構造的特性を考慮したネタはあまり売れる本にならない」というのが、一つの回答なのではないか、と考えました。どちらかというと、先輩からお酒飲みながら聞く類の話のようにも思います。

ただ、視点を考えると、短期的な効率を活かせる場所とか局面も今は増えてきているので、定式化されたルート自体が陳腐化しているな、というのも感触としてはあります。このあたりの定式とそこをあえて外す感覚をわかっている人が、今後うまくやれる人なのかな、というありきたりな結論になってしまいますが、まぁ、わかっている人はもう行動しているでしょうし、オチもないですが、むずかしい話なのだと思います。