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ncRNAと進化の話

極東ブログでこのタイミングでジャンクDNAから発現するncRNAと進化論との話が登場していた。

9月2日付のサイエンスのRNA特集を受けた形だが、先日のエントリーである生命について最近考えることで書いたとおり、俺は細胞内が情報処理装置として大量のジャンクDNAから発現するncRNAとDNAのインタラクションを利用していると考えている。

その基本的な部分の理解は、ジャンクDNAから大量のncRNAが発現されており、それがある程度DNAにインタラクションしているという事実にある。現在、このインタラクションの報告例はそれほど多くないが、俺の研究室で山形の方で実験が行われており、
・Dorosophiaや線虫において、大量のncRNAの存在が確認されている。
・ncRNAに作用するタンパク質もある程度発見されている。
みたいなことは既にわかっている。

もともとジャンクDNAが存在する理由として、最も有名なものは、ジャンクDNAの存在が進化を加速するという説だったが、これは間違いというわけではなく、大きくシステムを俯瞰したときの一側面のように感じる。

[注]この説は、簡単にいうとジャンクDNAが存在していた方が、DNAの突然変異が起こったときに細胞がダメージを受ける可能性が下がり、突然変異が蓄積しやすくなり、それがあるていど非連続な進化を可能にするという考え方である。

どういうことかというと、先日書いた俺の基本的な考えは、ncRNAがDNAに作用し、またそこから転写されたncRNAがなにかに作用し、その過程が情報回路のようになり、最終的に機能性タンパク質がコードされたRNAの翻訳量を制御するというものである。

この発現するncRNAの数はDNAの長さに比べて、必ずしてもリッチではないので、その目標DNAとの結合の過程で確率論的影響を受ける。この部分にRNA結合性タンパク質が関わってくると、たんぱく質が正確に目標をもった時の親和性はとても高いので、ある程度の量がそろうとその確率論的影響をRNA結合性たんぱく質がコントロール可能になる。このRNA結合性たんぱく質がRNA結合との性質とは別に、何かしらの外部刺激、内部の代謝状態の変化などをセンサリング可能だった場合さらに複雑な制御が可能になる。
このような制御の連鎖で考えたとき、ncRNAとDNAを基本とし、それにRNA結合タンパク質を交えたネットワークはさまざまな状況に対し発現するたんぱく質量をかなり複雑に制御可能になる。

この理解があると、先ほどのジャンクDNAの存在が進化を加速するという説は、まさしくそのとおりで、さらにそのジャンクDNAの変異はプログラムの変異という形で細胞に作用していることを示唆するものになる。

進化論はある生物種に対しては、数理解析を通して理解可能だが、生物全体を説明可能なものは実証が不可能だと考えているので、あんまり言及しない。知識も、メーナードスミス教授の教科書がMaxの知識だし。意識と知能の話は今、書いてるけど、ちょっと長くなりそうだなー。

[追記]ぬー、極東ブログにトラックバックがうてない。cocologの調子が悪いのかな。