昨日のエントリーで少しふれたが知性っていうものがなんなのかっていうのは、いままでいろんな人が述べているように真剣に考える価値がある。たとえば、創発みたいな一種の自己組織化のようなものを備えており、あるデータに対して新規な構造化をかけることができるものかと考えたら、知性の肝は構造化型情報圧縮アルゴリズムの延長線上にあるものになる。また、もしある一定の知識や機能をデータから抽出できることがその条件だったら、確率論型情報抽出アルゴリズムがその肝となると思う。
そのようなオブジェクト的な指向ではなく、アジャイル的な指向で知性というものはとらえた方が都合がいいという考えもある。それはつまり、何らかの縦断的な機能や性質を設定し、それを迅速に実現するために設計していく指向である。
この場合、アジャイル開発的にはありえないことだが、この実現するモノはきわめて抽象的にならざるを得ない。たとえば、攻殻機動隊では「好奇心」という概念がネットで自我を保つ手段のヒントであるとした。奇妙なことにダニエル・C・デネットも似たようなことを行っており、各知性の段階においてこの実現される機能は進化してきたと述べている。(しかし残念なことに、最新作、『自由は進化する』を読んでないので最新動向は知らない)ここで好奇心というものは、よく聞く「ネズミが新しい道を好む」と言った類の生存的有利に関するものではなく、どちらかというと生きる価値として、あたらしい情報を常に吸収するという姿勢を述べている。それが広大なネットという情報空間で自分を保つもののようだ。
では、新しい知性とはいったいなんなのだろうか。たとえば、レムの『虚数』に登場したスーパー生命体であるゴーレムXIV(思考過程をコントロールすることでエネルギーを発生させるという荒技を使えるよ)はそれを人間の言葉で説明した時点ですでに人間の理解可能なものになっているため説明不可能であると述べているが、その究極はエネルギー体になると述べている。まぁ、ぶっちゃけ嘘を言ってるかもしれないのでよくわからない。ただ、枠組みとしては、ゴーレム先生も言っているとおり、各人間の脳の能力を一端モデリングした上で、そのモデリングが構造によって受けている枠組みをはずしたものは少なくとも人間の知性を超えることにはなるだろう。
個人的には、人間の知性としては、
・データから情報を圧縮し、構造化、多次元化、量子化する浅いアルゴリズム
・それに効率的にアクセス可能な確率論的浅いアルゴリズム
・さらに、構造化した情報からアクセス可能な経験を抽出するアルゴリズム
・その経験から自発的にプログラムを変えるアルゴリズム
みたいなものをが用意されていて、これらを統括する逐次的アクセス権限でそれらを扱う意識を設計する必要があるのではないかと思うが、この設計だと自発的揺らぎが発生しないので、まぁ、要は全然理解してないってことなんでしょう。なんかニューロダイナミクスの基本を勉強した方がいい気もするので、今度、下のReviewは読んでみようかな。
Neural Network Dynamics.
Vogels TP, Rajan K, Abbott LF.
Annu Rev Neurosci. 2004 Jun 30;
Neural network modeling is often concerned with stimulus-driven responses, but most of the activity in the brain is internally generated. Here, we review network models of internally generated activity, focusing on three types of network dynamics: (a) sustained responses to transient stimuli, which provide a model of working memory; (b) oscillatory network activity; and (c) chaotic activity, which models complex patterns of background spiking in cortical and other circuits.We also review propagation of stimulus-driven activity through spontaneously active networks. Exploring these aspects of neural network dynamics is critical for understanding how neural circuits produce cognitive function
かなりそれっぽい論文な気はする。これから30年以内に知性をモデリングしようというプロジェクトが立ち上がると思うけど、そのときまで第一線のエンジニアでいたいものです。