FutureInsight.info

AI、ビッグデータ、ライフサイエンス、テクノロジービッグプレイヤーの動向、これからの働き方などの「未来」に注目して考察するブログです。

ゲームにおけるポストモダン論を見かけたので脊髄反射

ポストモダン化するコンピュータゲーム
http://d.hatena.ne.jp/hally/20051109

最近、ゲームに関する構造主義的思考にふれることが多く、そんな枠組みの中で、当然ポストモダンという概念に言及されるが、ソーカルの「知の欺瞞」よろしくこの手の話題はただの実体のない言語ゲームに陥らないように実践と現状分析を堅固に行わなければならない。そのなかでも、

これまでのところ、日本における脱ゲームモデル志向のゲームデザインはとりわけ「数値化可能な結末」を遠ざける方向、つまりコスティキャン流に言い換えるなら、「ゲーム」と「玩具」の境界領域を目指して突き進んできました。近年では「いっそゲームでなくしてしまったほうが面白いのではないか」というようなラディカルな意見さえ散見されるわけですが、思うにこの域に達した脱モデル化こそが、ゲームにおけるポストモダニズムなのではないでしょうか。

この言及は、任天堂の岩田社長の東京ゲームショーにおける基調講演とあわせて考えてしまいますが、ゲームという分野は他の芸術や文芸などと違いプレーヤが明らかに少ないので、そのような特定の動きに関するものと符合して考えても特に問題ないと思います。

岩田社長が述べた「ゲーム熟練者も初心者も楽しめる新しい商品を提案する」という考えからインターフェースを白紙にもどすという動き(DS,レボリューション)が最近活発ですが、この動きはゲームの熟練者にとって気持ちのいいものではないのでしょうか?

  • Engadget & Joystiq 宮本茂ロングインタビュー

http://japanese.engadget.com/2005/10/11/miyamoto-interview/
このインタビューのなかで宮本さんは、レボリューションのコントローラに関して聞かれて、以下のような答えを返しています。

ここはねぇ、本当はすごい自信があるんですよ(笑)。これはなぜかというとね、いまレボリューションの新しいインターフェイスをすごくPRをしてるんですけど、実はクラシックコントローラとぼくらが呼んでいるクラシックなコントローラにそのままつながる拡張コネクタがあるんですね。ですから単純にウェーブバード(ゲームキューブ用のワイヤレスコントローラ)がそのままレボリューション用に、もっと軽くちっちゃくなって出てくるというのはもう既にできてるわけなんですよ。それプラス、今回の新しい遊びがいっぱい盛り込める機能がついたことで、ものすごく新しい未来と過去を全部含めて、要はいままでのゲームプレイも全部保証しながら、さらに新しいゲームプレイを作ると。本当にすごいプランができたなあと思ってね(笑い)。スタッフはやっぱりいろんなインターフェイスを実験してきましたから、そのなかではみんなものすごく自信をもって今回のコントローラを見てます。

あとはどんな面白いゲームを作るかなんで(笑い)、そこに関してはまた自信がある…と言い切るのは厚かましいと思うので、まあ頑張って作りますけども。

しかも古くからあるFPS、ファーストパーソンシューターは特にアメリカは強いマーケットやと思うんですけどね、まあ、あの、非常に遊びにくかったですよ (笑い)。ぼくらが昔のコントローラでメトロイドなんかを作っていても非常に複雑になって行ってたのを、今回あれを使うことでものすごくシンプルな直感的なインターフェイスができたので、面白いと思いますよ。

この台詞から見ると、ゲームにおけるポストモダン化という現象は、最大のパイを得るために既存のゲーマーを巻き込みながら新しいマーケットを巻き込んで進まざるを得ないというのが僕の希望的観測で、この辺りがビジネスという枠組みに乗っていない文芸や芸術におけるポストモダン運動とは違う部分かと思います。というより、そういう行動を意識しないプレイヤーは容易に市場において駆逐されるということでしょうか。この辺りの言及はイノベーションのジレンマも彷彿とさせますね。