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Web2.0に関して、ちょっと関心したコメント

手品師っていうたとえが斬新である。

  • 「Web2.0」と手品師のビジネスモデル

http://www.h-yamaguchi.net/2006/02/web20_359b.html

Web2.0っていう言葉は、その実体のなさがなんとも怪しくもあり、それでいて、否定できない昨今の情勢もあるので、まぁ、なんなのだろうと思っている人もいると思うが、技術的というより、本質的な側面で見たとき、このエントリーのコメントはかなり的確に表現しているのではないかと思う。

で、こういうやり方について、どこかでみたことがある、という既視感があったわけだ。それが、手品師だ。最近の手品師というのは、タネ明かしをよくやる。テレビなどでよくみかけるのは「マジックのタネ教えます」みたいなやつ。手品をやっているところを裏から映したりスローモーションで出したりして、どうやっているかをさんざん見せる。で、そのうえで、自分のネタだけはタネを公開しない。想像するに、この狙いは、単に客の関心をひきつけるというだけでなく、テクニック的に劣る競争相手の「市場」を奪うことにあるのではないだろうか。タネを公開されてしまった手品師は、存在意義を失う。黙って退場するしかない。で、自分だけは独自のテクニックをもっていて、相手に公開されることがないから、安泰であると。これが最近の手品師のビジネスモデルだ。もちろん、自分自身も持ちネタの一部を失うし、「禁じ手」だったわけだが、最近はそうもいっていられないらしい。

技術的に見たら、このコメントは必ずしも正しくはない。まず、技術的側面において、APIが公開される主な理由は、それをスタンダードにしてしまうためだ。可能な所全てにAPIを潜り込ませたり、利用させたりして、そのAPIをスタンダードにしてしまう。このスタンダードを取る過程で、かなりの高負荷にも耐えうる基盤技術が必要になってくる。ここがみそだ。

そうすると、他の競合するサービスを提供する会社は、技術的、アイディア的にそれ以上のサービスを用意したうえで、さらにそのAPIを公開しないとスタンダードがとれなくなる。(ネット業界ではスタンダード、一位であることに大きな意味がある。)しかし、APIを公開している企業はもっとも根本的な基盤部分(付加分散や根本的なファイルシステム、Googleに至ってはチップセットから自社開発のサーバマシン)の技術を公開していないので、なかなかアイディアと勢いだけでは、スタンダード奪取時に想定しうる高負荷に耐える基盤部分を構築できない。そのため、APIを公開しているステージに入り込み殴り合うには基盤技術の面でかなりの障壁が生まれる。

現在、スタンダードが存在する分野に入り込み、殴り合いが可能なのは、GoogleやYahooなどの圧倒的な基盤技術を持っている企業だけだろう(まぁ、Yahooは買収がお気に入りだけど)。なので、Googleが通った後には何ものこらないなんて言われるわけだ。その辺の事情をうまく説明しているのがこちら。

  • Googleの圧倒的パワーがシリコンバレー生態系に与える影響

http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050824

ネット・ベンチャーがVCに行くと、

Why couldn't Google do what you're doing?

と聞かれてしまうと言う。実はこれが答に窮する厳しい質問になってしまったのだ。

つまり、常に、なぜ、君らがしていることをGoogleはやらないのか?(もしかして、Googleがやってきて、ペンペン草も生えないほど、ユーザをかっさらうんじゃねーの?)なんて言われるわけだ。

まぁ、この辺をふまえた上で、上のエントリーを読むといろんな切り口があっておもしろいなーって思う。