テトリスDSの好調ぶりをみるに、ゲーム業界に求められているおもしろさって結局このあたりなんだろうなと思いました。DSマリオといい任天堂の携帯ゲーム機の盤石ぶりはおそろしいですね。そういえば、巨大外資系食料品メーカでマーケティングをしているラグビーサークルの先輩が「ニンテンドーDSは技術を上げるのではなく、パラダイムを変えることで売り上げを伸ばした。こんな事例は俺も聞いたことない」と言っていました。業界外の人がそんな風に認識していることも驚きですが、E3でもかましてくれそうです。
- 「Wiiの開発費は他の次世代機の1/4」THQブライアン・ファレルCEO
http://www.nintendo-inside.jp/news/183/18311.html
WiiのアーキテクチャはGameCubeのクロックアップ版という話は本当のようですね。このあたりの会社の一貫した姿勢が任天堂の強みでしょうか。
さてさて、この開発費の高騰という問題は、Web開発を中心とした昨今のソフトウエア開発の流れからみるとかなり逆行している流れのように感じます。Perl、Ruby、PHPなどの軽量言語のフルサポートによる開発コストの低下、多くのWebベンダーが発表する巨大システムを扱う上でのAPIの公表により、簡単なワンアイディアをもとにすばらしいシステムを組むことが可能になってきました。また、これらの技術は習得が容易なため技術者の獲得コストも低く、開発自体も少人数で可能です。Rubyのまつもとさんが町おこしをするには、「軽量言語のハッカーを10人そろえた会社を作ればいい」なんてことを言っていました。エンタープライズ領域でも、昨今はアジャイル開発の導入、IDEのフルサポート、DIコンテナの積極的な導入により、ひたすら開発コストを下げるように進んでいると聞いたことがあります(専門外なのでよくわかりませんが)。
これらの分野と比較して、ゲーム開発はもちろんコスト低減の努力は続けられていますが、結果的には逆の方向に向かっています。ゲームは総合芸術なんて言葉を聞きますが、デザイナーとプログラマー、サウンドクリエイター、ディレクターも含め開発には膨大な人コストが必要です。EAなどはかなりしっかりしたゲーム開発フレームワークを備えていて、開発コストを下げていると聞いたことがありますが、労働環境を訴えられた話を聞くとプラットフォームがわずか5年でまったく変わるというゲーム業界特有の理由から、ある程度までコストを軽減できても軽減しきれない部分もあるようです。そんなわけでプロットフォームのアーキテクチャを変えないっていうことが、開発コストを上げないことのインテルも採用した一つの答えだとおもうのです。そんな人的コストが必要な産業でなお福岡という東京と離れた場所でゲームクリエイターの一大地域を作ろうとするGFFなどはがんばってほしいものです。俺も青森にLevel5があったら真剣に考えたと思いますけどw
- GFF
この開発費の高騰を打破するために、任天堂は枯れた技術の組み合わせからDSで新たなパラダイムを提唱したわけですが、Wiiもこの好調な流れを受けて成功するのか非常にみものです。僕個人としては、ゲーム業界の活性化のためにも是非この新しい取り組みは成功してほしいと思います。そして、このプラットファームのアーキテクチャをかえない、インターフェースの刷新による価値の提供というのは、単純なゲーム専用機の能力の向上による価値の提供と比較して、枯れた技術により構成されるため、ほかの組み込み、Webの分野にゲームが入っていくうえで一つの武器となる感じがします。
このパラダイムの変化に対抗するために、PSPはWeb2.0の流れを追従し、新たな価値を提供すべきだとおもうのですが、どこから金をとるかという話になると広告ということになってしまうので、いろいろ話が難しくなってしまいそうで、そのあたりのことは全然わかりません。W-ZERO3は通信コストで稼げるけど、PSPだとそれもできないからなー。とりとめのないことを書いていますが、「ではPS3がどういう方向に向かうべきか」を含め、そんなことを最近考えています。