最近、BDがほぼ勝利を収めつつあるという状況もあり、BDに関わる記事を読むことが多い。
HDビジネスに関わる者の感覚だと、一度HD画質を体験してしまうと、SD画質に戻ることは難しい。液晶テレビも品質のいいREGZA 37Z3500のような液晶が15万円台で買えてしまうことを考えると、今後数年のうちにHD画質が標準となることは間違いのない事実だと思う。この辺りの感覚は地デジも含め、川崎さんの以下のエントリに全く同意である。
かくいう自分もどちらかというとネットだけしか見ない人間だったので池田さんに近かったんだけど年末に家電量販店で色々見てみた結果考え方が変わった。これまでの地上波みてた人が地デジみたらもう戻れないと同じような感覚がブルーレイにはあったなぁ。HDDVDは知らんけど。
BDを語るためにはまずそのビジネスモデルを整理する必要がある。結局ビジネスモデルにも振れずフォーマットのみを見て議論を行っても、議論自体がまとはずれになってしまうことが多い。
以前、id:kwaizu、kawatanにも説明したがBDビジネスはDVDの暗号がすでに解かれてしまっており、レンタルDVDを通して、消費者が極めて安価にコンテンツをコピーを出来る現状を抜きにして語る事は出来ない。BDはこの現状をふまえ、今後暗号が解かれてしまった自体に備え、コンテンツ保護機能を動的に更新できる「BD+」を搭載している。
コンテンツプロバイダの多くはこのデジタルコンテンツが極めて安価にコピー出来てしまう現状を何とかしたいと考えている。レンタル料金である300円ぽっちで、自分たちが作成したコンテンツが複製可能なデジタルデータに出来てしまうことはコンテンツプロバイダにとって悪夢のような状況である。例えば、現在、中国では日本で発売されたPS2のソフトが発売日の次の日に一枚75円で並んでいるそうである。このような状況ではゲームビジネスを中国で展開することは出来ない。
実態報告として、先週中国に出張した役員の報告を例に、日本で2月24日に発売した「真・三國無双4」の海賊版がすでに2月25日には存在し、5元(75 円)で売られていたという凄まじい実態を苦笑いしながら紹介。「『真・三國無双4』が75円ですよ?(笑)」と、我ながら信じられないという体で、中国はまだパッケージゲームビジネスは難しいということを報告した。
これと同じように300円でDVDが複製可能な状態では、通常はまともなコンテンツビジネスを行うことなど出来るはずはないのだが、先進国では著作権が保護され大手を振ってコピーディスクを販売することは出来ないため、かろうじてコンテンツビジネスが成り立っている。特にアメリカでは映画の興行収入がコンテンツ収入の大半を占めるため、DVDがコピー可能なことによるビジネスが崩壊するリスクはあまり語られない。
しかし、このようなリスクを軽減し、ディスクを通してもまともなビジネスを行いたいと考えるのは企業として当然である。そこで、BDなりHD DVDではコンテンツ保護技術が極めて重要な要素となった。
さて、現状、映画系のはDVDは、以下のような販売形態が取られている。
- 4000円の一般モデルとより付加価値の高いモデルを最初に販売
- 半年後に2500円程度で普及版を販売
- さらに一年後に1500円程度で廉価版を販売
アニメ系のDVDは普及版、廉価版を作成しても特に売り上げがアップするわけではないので、以下のような販売形態が取られる。
- 4000円の一般モデルとより付加価値の高いモデルを最初に販売
- さらに付加価値の高いモデルを販売
- シリーズものをまとめて一つのパッケージにして販売
映画のDVDは4000円で買ってくれる層、2500円で買ってくれる層、1500円なら買っても良いかなと考えている層にそれぞれ映画のDVDを買ってもらうための方法である。アニメは、2500円で買ってくれる層、1500円なら買っても良いかなと考えている層よりもむしろ付加価値があれば、どんなに高くても買ってくれる層にリーチする戦略を採用している。
ここで、考えられるのはDVDがコピー可能なことによって、映画のDVD販売のモデルはかなり崩壊してしまうことである。おそらく「2500円で買ってくれる層」、「1500円なら買っても良いかなと考えている層」は半年、一年なんて待つことはせずにレンタルしたDVDをコピーしてしまう。次世代ディスクはこの現状を解決することが企業として利益を確保するための最優先事項である。高付加価値であることが重要であるアニメ系のコンテンツにとっても、次世代ディスクの持つHD画質はわかりやすい価値となる。よって、コンテンツプロバイダは、究極的には速やかにDVDディスクの供給を停止し、次世代ディスクへの移行を完了させたいと考えている。
では、次のエントリーでは動画配信ビジネスとBDのビジネスの関係について考えてみる。