AV業界の重鎮麻倉怜士がまとめた、以下の2007年度の総括が秀逸である。
- http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITxw000025122007
- http://it.nikkei.co.jp/digital/special/net_eh.aspx?n=MMITxw001025122007
ランキングとしては、
- 1位 有機ELテレビの登場で、画質に新しいリファレンスが
- 2位 ブルーレイ・ディスクレコーダーのブレイク
- 3位 パイオニア「KURO」が拓いた表現の新しい地平
- 4位 フロントプロジェクターはフルHDの時代へ
- 5位 HDオーディオの本格離陸
という風にまとめられれているが、なかでも3位のKUROに関する記事が興味深い。
薄型テレビについていうと、07年の最大の収穫はパイオニア「KURO」の登場であろう。画質では、先にスタートしたプラズマがかなり先行し、それに対し液晶が視野角や動画応答性などの欠陥を抱えながら肉薄してきたのがこれまでの状況だったが、今年KUROが出て接近した液晶をはるか下に蹴落とし、最高画質として君臨したという印象が強い。
実際にKUROを見たことがある人なら上記のKUROに関する記述がはったりではないことを理解してくれると思う。KUROと液晶の画質の差はその技術の差ではなく、プラズマと液晶の動作原理の差である。SONYが液晶に当初乗り気でなかった理由として、液晶の動作原理ゆえの応答性の低さ、ダイナミックレンジの狭さなどがSONYのディスプレイ屋としてプライドを許さなかった、ということがよく言われる。また、それ故に技術的素地の良さから有機ELに傾倒していることは以下のエントリーに記載した。
今、ここで僕が考えていることは、それでは液晶からKUROのような名機と呼ばれる機体が生まれるかどうかである。例えば、ブラウン管ではSONYの後期のトリニトロン、ブラウン管の業務用ディスプレイではEIZOの21インチモニタなどがディスプレイ業界では名機と呼ばれている。今年、この系譜にプラズマのKUROが加わったことは大変喜ばしい。
今後液晶テレビに名機と呼ばれる機体が生まれるかどうかというのは注目に値する。SONYが有機ELに注力することを考えると、BRAVIAからそのような機体が出ることは難しいかもしれない。僕が利用しているREGZA 37Z3500はすばらしいスペックを誇っていると思うが、しかしそれは東芝の半導体開発能力が生み出す多様な機能がすばらしいのでありパネル自体はLG電子が作成しており、画質的にKUROと比較することは難しい。
そもそも、液晶という技術は量産、低電力にこそ適しているが画質的にはプラズマ、有機ELと比較して特に優位な点がない。そう考えると、今後液晶で名機が誕生する可能性は低いかもしれないが、液晶に注力したシャープからなにかブレイクスルーが誕生することを見守りたいと思う。
といっても、僕自身はREGZA 37Z3500にとても満足しているので、どの液晶を買うか悩んでいる人はこれを買えば後悔しないと思う。