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メディア王マードックと新聞の価値

今週のNewsweek(2008/4/30号)は読み応えがあった。映画特集はほとんど興味がなかったが、その前の記事で「空の旅を見舞う再編の乱気流」と「マードックが仕掛ける脱・経済誌の衝撃」が良かった。ここでは、「マードックが仕掛ける脱・経済誌の衝撃」について取り上げたい。

メディア王マードックといえば、Web業界にいるひとならご存知MySpaceを買収したニューズ・コーポレーションのオーナーCEOである。日本でも孫正義と組んでテレビ朝日の株を買ったりしていたので記憶にある人もいるかもしれない。

彼の経営するニューズ・コーポレーションが所有する会社を見るとなぜ彼がメディア王と呼ばれるか一目瞭然である。

尊敬されるメディアソースの提供

さて、このニューズ・コーポレーションが「ウォールストリート・ジャーナル」を買収したことから「マードックが仕掛ける脱・経済誌の衝撃」は始まる。このタイミングで新聞社を買うことはどうだろうという意見も当然あると思う。現在、新聞社のプレゼンスは日本、アメリカ、ヨーロッパと地域を問わず低下する一方だし、今後も起死回生の一発を出せる体力があるとこは少ない。だが、新聞社という枠組みではなく、メディア・コングロマリットの一つという位置づけに考えると、新聞社というものの価値は輝いているように感じる。それは保守の論戦をはり、尊敬されるメディアソースとしての価値だ。

特集には「尊敬」について以下のようにある。

77歳のマードックが新たな戦いを始めた理由は、三つの情熱にある。新聞、権力、尊敬だ。多くのメディアの買収を通じて、権力は手に入れた。しかし、尊敬はなかなか得られない。ニューヨークタイムズを「アメリカで最も引用される新聞」の座から追い落とし、ウォールストリート・ジャーナルをその座に就けられれば、ついに尊敬も得られるだろう・・・。

「尊敬」は、個人的な尊敬に限った話ではなく、尊敬されるメディアソースとしての価値も含まれる。その尊敬とは、取材力に裏づけされ、取材力という点で「新聞」という組織は一日の長がある。取材力のないメディアが尊敬されることはないだろう。この場合の取材力とは、丹念に一次情報源に当たり、丹念に関係者の言葉を引き出すことにある。この点に関して新聞より優れている組織はない。

今後の新聞の価値

後半のニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグがウォールストリート・ジャーナルのライバル紙であるNYタイムズを買収するという噂が広がっているというくだりもおもしろい。

業界筋の間でもニューヨーク・タイムズの「ブランドを守る」には、ブルームバーグに買収されるのが一番だという声は大きい。マードックも、ブルームバーグとニューヨークタイムズの相性がいいことは認める。<中略>

ブルームバーグ - ニューヨークタイムズ連合との競争には、さすがのマードックにも不安があるらしい。「ブルームバーグのビジネスの才能には大きな敬意」を払っていると、マードックは本誌に語った。だから、そんな「彼とは闘いたくない」そうだ。

このよう状況を見ていると、新聞のメディアとしての価値が移り変わっていることを感じる。昔のメディアの主流的位置付けから、ニューズ・コーポレーションやブルームバーグのメディアコングロマリットの中で取材力に裏づけされた尊敬されるメディアソースに。情報源が多角化するなかで、そのような流れを感じたいい特集でした。