大学時代に読んでえらく感銘を受けた「銃・病原菌・鉄」がはてブで取り上げられているようなので僕からも紹介を。
この本は進化生物学者、分子生理学者(医者)の2つの学問領域で大きな成果を上げている筆者ジャレド・ダイアモンドのみがたどり着けるある種の思考実験の究極の形を提示している本だ。この本を通してジャレド・ダイアモンドは歴史科学という歴史学をより定量化した新たな学問領域を提唱してまでみせた。
ダーウィンのガラパゴス諸島での経験よろしく、ジャレド・ダイアモンドはニューギニアの経験を経て民族間に能力の差はないという結論に達した。つまり、世界史における民族の優劣は人種的な差異ではなく、その民族が発生した地理的要因に依っていると主張するのである。簡単に言ってしまえば珊瑚環礁の島には鉱床はなく、金属器は存在しない。栽培可能な高エネルギーの植物がなければ農業は始まらない。家畜化可能な大型の生物が存在しない地域では水牛を用いた大規模農業を行うことはできない。民族がスタートした場所の気候、動植物、金属の算出といった環境が、数千年にわたって民族の運命を左右したと主張している。
この本を読まずして、民族の優劣を語るなかれ。現代のそんな基礎的な位置づけにさえある本ではないかと思う。