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「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議 第2回」から学ぶネット家電の論点

世間(かなり狭いですが)はYAPC::Asiaで盛り上がる中、「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議 第2回」に行ってきました。実は第1回にも行って居たのですが、ちょっとログをまとめるのを放置していたら時期を逃しました。そんなわけで、今回は忘れないうちに早めに感じたことをまとめようと思います。

見かけた他の人のログも簡単にまとめておきます。(随時更新)

今回の「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議 第2回」は、以下のお二方がゲストでした。

  • PanasonicがGoogleと連携し、北米市場にてYouTube閲覧機能「VIERA CAST」を搭載したプラズマテレビVIErAを発表したことは記憶に新しいが、このYouTube対応VIErAの仕掛け人であるパナソニックAVCネットワークス社の池田浩幸氏
  • もはや説明すら不要な大ヒットCGM動画サイト「ニコニコ動画」。"時報\\\\\\"などのユニークな広告ビジネスを展開していることでも有名だが、その広告ビジネスを担当しておられる株式会社ドワンゴの岡村裕之氏

まず、VIERA CASTの説明を池田さんにしていただき、次にニコニコ動画の主に広告ビジネス面の説明を岡村さんにしていただきました。

VIERA CASTについて感じたこと

YouTube、Picasaなどのネットコンテンツを液晶テレビに差し込むVIERA CASTはインターフェース自体の定義をネットから持ってきて差し込むという実装をしています。この辺りの実装はUI Engine、Braviaのアプリキャストと同じで、いままでの家電業界が採用していたインターフェースを全てデバイス側に定義してしまうという方法はカテゴリやユーザの思考がダイナミックに変化するネットコンテンツにおいては通用しなくなっていることを感じました。

また、VieraのVIERA CASTとBraviaのアプリキャストがともにJavaScriptをUIの描画エンジンに採用しているのも面白いです。JavaScriptはプロトタイプ型の言語かつイベントドリブンなので、他の言語と比較して明らかにインターフェースの実装が作りやすいのではないかと思います。僕が知っている限りでもJavaScriptのオープン実装は5種類以上ありますし。しかし、Braviaのアプリキャストと同じでVIERA CASTもこの機能のためにハードウェア側のアーキテクチャの変更を基本的に行っていないというのが面白かったです。

VIERA CASTのUIはUSのユーザの意見を取り入れて、US側でデザインを行ったというのも興味深いです。色とかあとエフェクトの効果音とか確かに日本的な感じがしませんでした。

あとUS側のユーザの声で、「いつまでリモコンで操作をさせようと無駄な努力を続けているんだ。はやくフルキーボードを付けろ。」という声があったのを紹介していましたが、結構その思想はその思想でありだなと思います。要は今のキーボードのデザインが良くないだけで、家電のリモコンぽいデザインのフルキーボードを付けるというのもありっちゃありだと思うんですよね。特に、BDでBD-Javaが完全に動くようになれば、ますますその需要は高まるのではないかと。

ニコニコ動画の広告モデルについて

まず、ニコニコ動画の以下の収益の詳細を教えてもらいました。

  • プレミアム会員: 19万人/(月額525円)
  • 広告事業: 3200万円/月
  • アフィリエイトの売り上げ: 2億8600万円/月 (この中の約7%くらいが収益か?)

これは予想以上にお金になっていない印象。特に広告事業が月3200万円はそうとう厳しいのでないでしょうか。ただし、ユーザの平均滞在時間が月3時間14分という驚異の数字。月3時間14分ってすごいですよ。単純に考えても一日6分滞在していることになります。平均でこれは本当にすごい。

あと、ニコニコ動画に広告を出す場合、クリエイティブ側の人間が異常に張り切ってしまってニコニコらしさを追求したバナーを作るという話も面白かったです。結果、Yahoo、mixi、Greeでは同じバナーが貼られている中、ニコニコ動画だけはニコニコらしいおもしろいバナーが貼られるということが多々あるのだそうです。トップページを何度かリロードしてみましたが確かにこれとか面白いですね。

  • 三国志 online?

  • 北斗の拳 オンライン

ニコニコ動画とオンラインゲームはかなり親和性が高いらしく、オンラインゲームの広告がかなり多いのそうです。

ネットと家電のキャズムを超えるための論点

まだ、自分の考えがまとまり切れてないので「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議 第2回」を通して感じたことを箇条書きで。

  • UGCとテレビは本当に結合する必要はあるのか、という疑問は一理ある。というのもAtomデバイスが普及して、低電力ながらそこそこきちんとブラウザを動かせるコンピュータが例えば3万円とかで登場するのなら、それはそれで充分な気がする。それなんてApple TV、それなんてWii。
  • ユーザの視聴データというアンタッチャブルな領域に踏み込めない限りなかなかおもしろい企画は作れなそう。そこをクリアしてきたWiiの「テレビの友チャンネル Gガイド for Wii」はまさに異色のサービス。家電業界が様子を見ているうちに、Appleと任天堂が革新的なサービス初めてしまいそう。(参考: http://watch.impress.co.jp/game%2Fdocs/20080304/tele.htm)
  • とにもかくにも家電業界の動きが遅すぎる。一つの企画を通すのに年単位の時間がかかっているようでは、リリースした時点でネットコンテンツの流行は変わってしまっている。Apple TVのUIは組み込みで柔軟に対応できないという意見があったが、Apple TVのUIはiTunesなのでいつでもアップデート可能。現状、iTunes以上に成功したコンテンツマネージメントシステムは存在しない。ユーザにとってはiTunesがテレビで動くことがもっとも満足度が高い可能性を忘れてはいけない。
  • テレビではバナークリック方式の広告が打てない。しかしCMを差し込む広告はおそらくもうネットコンテンツを利用しているユーザには受け入れられない。コンテンツの制作部分からユーザと広告を巻き込む方式にある程度シフトする必要があるかも。

まとめという感想

いつも思うのですが、「ネットと家電のキャズムを超えろ!会議」はネットに落ちていない知識や意見、考え方に出会える面白い企画です。これからも可能な限り参加していこうと思います。