過去に以下のような液晶の進化がそろそろ止まるのでないかというエントリーを書きました。
僕はこの液晶の進化の停滞を「液晶という技術の素地の悪さ」に起因していると思います。つまり、映像の進化がそろそろ、これ以上はどんなにがんばっても素人目にはほとんどわからないレベルに達していて、これ以上の目に見えた進化はシステム的に難しい領域に達しているのではないかということです。今後も各社は「録画」や「薄型」など違う側面で付加価値を追求する方向にいくと思います。
最近、日経エレクトロニクスなどを読んでいても記事になるのは、
- シャープが境に建設中の第10世代液晶コンビナートの設備
- ソニー、サムソンの世界レベルでのガチンコバトル
- どうしてブラウン管の時と違って、液晶では中国メーカーが液晶勝てないのか
というような経営寄りのトピックが多く、液晶の進化に関する話はほとんど見られません。もう液晶の研究は生産効率のフェーズに入ったのかなと思っていたのですが、以下のAV Watchの記事を読んでちょっと違う方向に進化するのかなと感じました。
HDR的手法を使うことで広色域性能を出してきた
ちょっとあまり詳しくない領域のため裏の取れていない内容で申し訳ないのですが、以下のような記述があります。
広色域性能はx.v.ColorとDeep Colorの両用で初めて最大発揮されることになるのだが、現行のDVD、BD、放送ソースにおいても、恩恵を授かることはできる。それが「色空間」の設定で、ここは通常は「オート」になっているが、これを「ワイド」に強制設定することで常時、広色域のカラー表現が利用されるようになるのだ。
これは意外にお勧めで、緑の色純度が増し、青に深みが増すようになる。植物がみずみずしく、空や海に広がりが感じられるため、一度、ワイド色空間になれてしまうと、通常モードが物足りなく感じられてしまうほど効果が高いので、常用したいところ。ただ、色空間ワイドでも赤色の純度はあまり変わらず、最明部の赤は、ややマゼンタに寄っているように見える。
現行のDVD、BDにx.v.ColorとDeep Colorのソースは含まれていないのですが、それでも「色空間」をワイドに指定したときに何かしら画質が変化されるということはREGZAの中で半導体が映像ソースの色空間の拡張、補間を行っているということでしょうか。それを示唆するのが以下の記述です。
ところで、46ZH500では、液晶パネルが10bit、1,024階調駆動であり、また映像処理部での内部演算精度は14bitとなっており、階調分解性能が従来機と比較して向上しているとのこと。実際黒白グラデーション、カラーグラデーションを表示させてみたが疑似輪郭が全くなく、まさに継ぎ目のないグラデーション表現が行なえていることが確認できた。なお、このハイビット高階調性能を生かすべく、46ZH500はDeep Colorに対応している。
ポイントは「映像処理部での内部演算精度は14bit」という記述です。これはグラフィック業界ではHDRレンダリングというテクニックで有名なのですが(特にデビルメイクライとか)、色空間を通常表示される8bit空間から、より高ビット(ゲーム業界では10bitの時がおおい)に拡張し、エフェクト処理をかけた上で画像の最終出力のタイミングでまた通常の色空間に戻すという手法があります。これは8bitの状態でそのまま複雑なエフェクトをかけてしまうと細部の色情報が失われてしまうためで、光のエフェクトや水面などの同じ色(光なら白、水面なら水色)が並んでいる部分を処理するのによく使われるのですが、テレビの中でもこの手法を使っているとは知らなかったです。しかも14bitとは。
絵作りの過程で14bitにしてエフェクトをかけ、それを10bitで出力しているのならば、上の記述も納得です。非常に興味深い手法だと思います。
いつでも高画質をリアルタイムに保つという価値
あと、後半のトピックが「いかに家庭内でどのような時も自動的に高画質を保つか」という部分をついています。どうやらREGZAは原信号重視の設定を残しつつ、アグレッシブに絵作りを行う設定を押してきているようです。しかし結論がこれでは、ちょっとREGZAも浮かばれないかもしれません。
常用性が高いのは「標準」「テレビプロ」「ゲーム」。一般的な映像視聴ならばコントラスト感が心地よい「標準」だが、肌色の出方が気にくわない場合は「テレビプロ」を推す。原信号重視ならば「ゲーム」がお勧めだ。
「標準」、「テレビプロ」、「ゲーム」ってあまり映像をいじってない設定ですから、やはり映像の専門家からみたらあまりいじらない設定がいいということですね。まぁ、これは好き好きだと思いますが、僕もあまり絵作りするのは好きでないので、家では「標準」を利用しています。
まとめ
REGZAは液晶テレビの特に半導体の部分ではトップを走っているので、その新商品はトレンドを良くつかめます。おそらく、今後は以下のような方向性に進むのではないかと思います。
- ノイズリダクションなどのエフェクトをかける際にいったん高いビットの内部演算精度を利用した上で8bitの映像ソースを10bitで出力する機能
- さまざまな絵作りを行うモードを用意し、それを環境によってリアルタイムにシフトさせる機能
そこまで購入欲をそそる機能というわけではありませんが、あまり液晶に詳しくないユーザに高画質な映像を見せるということを考えるといい方向性かなと思います。