村上春樹は小説も好きだが、エッセイも好きです。今日、村上春樹が読者からのメールに質問に答える企画本である「ひとつ、村上さんでやってみるか(以下略)」を読んでいたら全く予期しないタイミングで村上春樹が日本国憲法についてどのように考えているかを説明したページにぶつかったので紹介します。掲載されている本は以下の本です。こんなマニアックな本は村上春樹好き以外は絶対に買わないのでアマゾンの読者評価も高いですね。
「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi Original) | |
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さて、このなかの質問382で村上春樹に日本国憲法(特に9条)をどのように考えているという質問がきました。日本国憲法は一度読んだことがある人ならわかるかと思いますが、わかりやすくてとても味わい深い文章です。
村上春樹はこの質問に対してまず日本国憲法に対する基本的な理解として以下の点をあげています。
- 現在の憲法は日本の現実と照らし合わせてみて大きな矛盾をはらんでいること。つまり、平和憲法といいつつ軍隊を保持し、それをイラクに派遣していること。
- この「ねじれ」が日本人の心理に「偽善性」をもたらしたこと。
- 公平に見て、日本国憲法は占領軍が起草したものであり、国民が自発的に作ったものではないこと。
しかし、このような基本的な理解の中、村上春樹は
僕らはそのような矛盾や、ねじれや、偽善性や、出生の不分明みたいなものとなんとか折り合いをつけて、一緒にうまく暮らしていく方法を覚えることを、切実に求められているのではないでしょうか?
と呼びかけます。このなかの「なんとか折り合いをつける」という言葉は村上春樹の小説の大きなテーマだと僕は認識しています。(まさか、この年齢になって村上春樹のことを語る機会があるとは思わなかったのでちょっと感激です。)さらに、
そんな折り合いみたいなものが、僕らの人生をより深く豊かなものにしてくれているのではありませんか?出生の不分明に関して言えば、生みの親より育ての親、という言葉だってありますよね。
と続け、日本で現実と論理が齟齬なくぴったりくっついてしまうような現実が訪れることを真剣におびえています、という態度を表明し、
結論を申し上げれば、「今のままでがんばってやっていこうじゃないか」ということです。
と言います。ただ、その「なんとかうまくやっていく」ためには、自分自身の中にあるねじれや偽善性をもう一度しっかりとみつめなおす必要があると説きます。そういう議論のステージを進める上で、憲法改正議論は平和憲法を守れとヒステリックに叫ぶことよりも有意義であるし、感情的になるよりももっと静かに深い部分考えることで、社会意識みたいなものをバージョンアップすることができると考えているようです。
政治的素養のある人から見ればナイーブな意見かもしれませんが、この考え方はとてもすんなりと僕の中にしみこんできました。上でリンクを張った日本国憲法にはたしかに明らかに現実と大きなギャップが存在するのですが、そのギャップがもたらす社会的意味が邪魔な人も世の中に多いのではないかと思います。ただ、「なんとか折り合いをつけてみる」ことをもう少し考えてみる価値は確かにありそうだなと思います。
この一節を読めただけでも上の本を読んだ価値がありました。本の中の490ある質問で他にも紹介したいことがたくさんあったのですが、どれが一番紹介したかったと言われればやはりこの質問かなと思います。村上春樹好きなら買っても損のない本かなと思います。実はこの本の前に同じシリーズが2冊出ていたりします。この2冊も昔読みましたがなかなか面白かったです。スタバでフラペチーノでも食べながら読むための軽い本に最適です。
「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi original (66号)) | |
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「これだけは、村上さんに言っておこう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? | |
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