世界的金融破綻がどういう風にスタートアップに影響を与えているか、スタートアップのEXIT戦略がかなり限定されているなかでの方法論を梅田望夫氏は語る必要があるんじゃないのかなと思いつつ、こんなことを書くのもあれなのですが、梅田望夫氏が現在現在パリで進行中の竜王戦のリアルタイムな感想をblogで書いており、これが面白いです。
まず、梅田望夫氏が現在将棋対してどのような思いを持って接しているかはこのあたりが詳しいです。
しかし将棋を観る楽しみはそこにだけあるのではない。必ずしも将棋が強くなくても、「深い知識と豊かな想像力と鋭い観察力にめぐまれた将棋ファン」になることができるのではないだろうか。
無限に広がっていく将棋のさまを眺めながら、将棋についてかつて語られた豊穣な言葉を思い起して考えたり、別の芸術の世界を連想してその共通するところを抽出したり、そこから得られたエッセンスを現代を生きる糧にしようとしたり、私たちが一局の将棋から吸収(テイク・イン)できることはたくさんある。
この部分に関して、梅田望夫氏の意見には賛成できます。才能ある人の思考にふれることそのものがエンターティンメントであり、将棋は一局の中にその中の感情、思考の道筋といったエッセンスが凝縮されているため、有能な解説者の手によって極上のエンターティンメントとなる可能性があると思います。この解説者には2つのタイプが必要で、
- 将棋の技巧に深い理解を持つ人
- 一般人の将棋の楽しみ方に深い理解を持つ人
梅田望夫氏ほど、今まで多くの人が興味が無かった分野に目を向けさせる、わかりにくい概念を刺激的な言葉に翻訳するという観点から、後者の「一般人の将棋の楽しみ方に深い理解を持つ人」という条件にぴったりはまる人もすくないのではないかと。
さらに現代将棋には、コンピュータと人間との勝負という面白い題材があります。そのトピックに関するblogの記述も刺激的です。
それは、ベテラン棋士たちよりもうんと長期的な視点で人生を考えていかなければならない若手棋士にとっては死活問題である。そしてだからこそ自分たちの世代は、コンピュータとの戦いから絶対に逃げてはいけないのだと、渡辺さんは腹をくくっている。またコンピュータ・ソフト開発者に対し、トッププロという相手の手の内を研究し(むろんトッププロも真剣にソフトの手の内を研究する)、ソフトを改良して頂点を目指す真剣勝負を、自分たちと本気でやり続ける気概はあるのか、あるのなら俺は受けて立つぞ、と宣言しているのだとも読める。一回勝負で勝つとか負けるの話ではなく、実力紙一重の将棋の天才たち(これまでは人間だけ)がその頂点を決めるシステムの中にコンピュータ・ソフトも入って、本当に最後まで戦い続ける気があるのかと、渡辺さんは問うているのだ。そう問い、そう問うたことの責任を全うすることが、これからの棋界を背負う第一人者の仕事だと認識しているのである。
ほとんどSFチックな話ですが、この辺りも極めておもしろい題材です。将棋業界は、近い将来、このタイミングで梅田望夫氏という人材が現れたことに感謝することになるかもしれないなと、なんとなく感じました。