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iPhoneプラットフォームの魅力を決めるのはどこまでアプリの値段を上げることが可能な市場になるかにかかっている

id:shi3zさんと電子の妖精id:kawangoさんによるプラットフォーム議論がスタートしています。こんな現役経営者の議論を見る機会はなかなかないので非常におもしろいです。以下はその関連エントリーです。上から順に読むことをお勧めします。

さらにこのやりとりに日本で最も有名な個人のiPhoneアプリ制作者であるfladdictさんが絡んでいます。

いやー、非常に面白い。上のやりとりを読ませてもらった上で自分なりに今後のiPhoneアプリプラットフォームの魅力を考えてみると論点は以下の2つなのかなと考えました。

  • ツール系アプリに作用するものすごい値下げ圧力にどのように対抗するか
  • ゲーム系アプリはどこまで値段を上げることがユーザに許容されるか

ツール系アプリに作用するものすごい値下げ圧力にどのように対抗するか

こちらはどのプラットフォームでも例外なく発生することなのですが、ある程度成熟したプラットフォームでは無料のツールアプリでだいたいのことをすることが可能になります。Windows PCでも一般用途において無料ツールでできないことを探す方が難しいですよね。唯一の例外はMaya、Maxなどのモデリングツール、CADやPhotoshopあと財務処理のようなお仕事に関わる類のOnly OneかつNo.1のツールを利用する場合です。これらのツールは利益や付加価値を生み出す源泉となるものですので、相変わらず値下げ圧力はあるものの機能が他のソフトウェアを圧倒していることもあり、きちんと販売が可能となるツールです。
iPhoneも遅かれ早かれ、このような間接的に利益を産み出すことが可能なツール以外は無料となるでしょう。もしくは有料のアプリもあるものの、それは上級者の限られた人のツールとなり殆どの人は無料アプリで我慢することが可能なので、圧倒的なシェアを奪うということは不可能というポジションになると思います(市場がでかくなるとそのようなマニアックツールでもやっていけるようになるのですが)。なので、僕はツール系アプリがきちんと収益を上げることができるようになるかどうかは間接的に利益を産み出すことが可能なNo.1ツールが誕生してくるかどうかに関わっていると思います。やはり100円では会社を維持していくのは非常に厳しい。最低でも2000円くらいの値段をつけることができるとプラットフォームとして俄然燃える市場になってくると思います。
このような観点でみるとshi3zさんの会社が作っているZeptpadの2300円という価格付けは非常に興味深いです。

2300円といったらiPhoneアプリの中でも最高水準でしょう。要はこの値段のアプリがきちんとユーザに価値を認められるくらい、ユーザに利益をもたらす付加価値を提供できるかどうかにツール系アプリの未来はかかっていると思います。

ゲーム系アプリはどこまで値段を上げることがユーザに許容されるか

こちらはiPhoneのゲームを複数の友人から触らせてもらった感じた完全な私感なのですが、iPhoneのゲーム作りは一つの作り込まれた大作よりも、1週間程度おもしろく遊べる。単純だけどはまる要素がありユーザにとってコンテンツの消費サイクルが比較的早く、心理的な購入障壁の低い安価なゲームが向いている感じがしました。
なぜそんなことを思ったかというとパズルのようなコンテンツならばiPhoneのインターフェースは非常に快適なのですが、ガチンコのアクションをやろうとした場合、「両手でもてない、指のタッチインターフェース」というiPhoneのスタイルが、ユーザがプレイスキルを高めていくには、最高点の操作精度が低いように感じたのです。同じタッチインターフェースを持つDSには任天堂伝統の使いやすい十字キーがあるためこのような心配はないのですが、iPhoneの今のインターフェースで長く遊べる成長要素のあるアクションをゲームデザインするのはなかなか従来の手法では難しいだろうなと感じた次第です。
ゲームに2000円以上を払ってくれるユーザは、多くはゲームファンが該当すると思うのですが、このゲームファンが今のiPhoneのインターフェースで長時間遊ぶタイプの大作ゲームを買うかと言われるとなかなか難しい感じがします。もちろんこれはユーザ側にとっての慣れの問題であり時間が解決してくれるとは思うのですが、僕はゲームの作り込みという部分はインターフェースにもかなり依存していると思っています。なので、今のiPhoneのインターフェースを用いて、2000円以上を払わせる価値のあるゲームを作る方法論が確立されるかどうかが大手ゲーム会社が本気でiPhoneに参入してくるかどうかを決める大事な指標になってくると考えている次第です。
このような現状を考えた場合、id:shi3zさんのUEIとAQインタラクティブが一緒にやっているiPhone/iPod touch用ゲームの共同ブランド「出雲芸神」の作ったGlandarius Wing Strikeの600円という値段も非常に興味深いです。

ゲーム自体は悲しいことにあんまり面白くなかったのですが、今後もiPhoneで値段の高いゲームを売ることができるノウハウをしっかりためていただき世界に勝負を仕掛けて欲しいと思います。あと、補足までに他の大手ゲームメーカが提供しているゲームの値段を書いておきます。

メーカー タイトル 価格
KONAMI ダンス・ダンスレボリューションS 800円
CAPCOM バイオハザード ディジェネレーション 800円
KONAMI METAL GEAR SOLID TOUCH 900円
EA SimCity 600円
EA Need For Speed Undercover 800円
ハドソン ボンバーマンTOUCH 900円
EA The Sims 3 1200円

こうやって眺めてみると1000円の壁をやぶることがまずは大きなポイントになってくると思います。The Sims 3は1200円ながら好調な売り上げ(iPhone単体ではなく、PC版も含め全体で140万本)らしいので、意外にあっさりこの壁もみんな超えてくるのでしょうか。非常に注目しております。

まとめ

僕の興味はiPhoneがプラットフォームとしてどの程度まで高付加価値のツールや値段の高いゲームを提供できる市場に成長するかどうかにあります。id:shi3zさんの現在行っていることはどれもこの価格を上げていこうという戦略だと解釈しているので、やはり上記エントリーのような強気なことをいうことはあるなと思っています。一方、id:kawangoさんのiPhoneプラットフォームでそのような値段の高いツールを売ることはプラットフォームの特性上難しいというのも非常に説得力があります。たしかに現状のシステムだとほとんど無理な気もしますね。
このような議論を読めるのは非常にありがたいです。iPhoneは過去に例のない先進的な市場であることは間違いないので今後も注目していきたいです。