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「どうして日本企業がiPhoneを生み出せないか」という設問について

以下のエントリーを読んでいろいろ感じたことがあったのでまとめてみます。

iPhoneは権限委譲やデザイン重視とかで到達できる領域のプロダクトではないですよね

皆様ご存じの通り、日本の大企業がデザイン重視とか権限委譲をしてもiPhoneはできません。iTunesも結局ジョブスの力が無ければ、iTunes Music Storeのような最強のプラットフォームに育つことはなかったことは以下の本に書かれている通り。以下のエントリーにもまとめているのでどうぞ。

iPodは何を変えたのか?
iPodは何を変えたのか?上浦 倫人

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starsここまでとは
stars小さな成功の積み重ねが大きな成功へ

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ブラックスワンにも書かれていますが、歴史は振り返ってみると、まるで詰め将棋のようにiPodが完成したように見えますが、実際に時系列を追ってみると、かなり奇跡的な過程を踏んでいることは一目瞭然です。たとえば、ジョブスが音楽レーベルのトップマネージメントをどのように説得したかだけをみても、偶然とジョブスの力に支えられていることは疑いようがありません。

  • 最も影響力のあるアニメスタジオ「ピクサー」のCEOでもあるスティーブ・ジョブスのミーティングを断ることのできるレーベルのトップマネージメントはいなかった。他のコンピュータ、ソフトウェア業界のトップ、ベンチャーのカリスマ経営者でもこのようにはいかなかっただろう。
  • ジョブスの辞書に2流という言葉は存在しない。自らのミュージックストアを2流としないため、初めからUSAの5大レーベル全ての楽曲を販売することを前提に行動していた。ソニー・ミュージックさえも彼の交渉リストに初めから含まれていた。(この本に出てくるSONYストリンガーCEOはとても滑稽に描かれている)
  • iTunesはスタート時点ではMacしかサポートしていなかったので、「どんなに普及してもこのサービスのシェアは全PCユーザの5%である」という理由が存在した。ユニバーサルのトップ、ダグ・モリスは「アップルがマックで一年音楽を配信したぐらいで、音楽産業全体が破滅するわけないだろ。一度やらせてみろよ」などといっていた。業界の巨人ユニーバーサルを説得できれば他のレーベルは基本的に右に倣えだった。さらに業界のカリスマの何人かはアップルの熱烈なファンだった。
  • iTunesが完全に成功した後、WindowsにiTunesを展開する際、アップルのWindowsへの展開を断ることは、すなわち「ユーザに正規に曲を購入できる機会の提供を断る」ことを意味する。そのような汚名をかぶることはクールを売り物にするレーベルにとっては不可能だった。

ジョブス不在時のゆるみもあった

そういえば、昔@kawatanと話したことを思い出しました。@kawatan曰く、もしジョブスがいたらiPhone OS 3.0の音声コントロール機能はリリースされなかっただろうとうことです。ちょっと使ってみた人ならわかることですが、iPhoneの音声コントロール機能は少なくとも日本語では全く使い物になりません。(英語でどのくらいの精度がでているのか知らないので、ここではとりあげませんが)音声認識をミスったときに他人に電話されてしまうという致命的な欠陥を備えています。これって、どう考えても「美しくない」ですよね。「セクシーさ」のかけらもありません。あれをほめているApple記者もいたりして、そういう人たちはちょっと信用できないなと思いました。そんで、ちょっと離れただけで、こんなゆるみがでてきてしまうんだから、やっぱりジョブスのリーダーシップって大事なんだなーっと思った次第です。

まとめ

そんなわけで、日本企業どのようにiPhoneを作れるかを考えて見た場合、もっとリーダーシップとかその企業の置かれた環境、そなえた技術、歴史から、到達しうる企業個別の最高点を考えてRoadmapを引くということが「iPhoneと同程度の着地点」が設定可能かどうかを検証する唯一の手段だと思うのです。極めて一般的な話ですが。ただ、ちらほらRoadmapドリブンな動きをプロダクトベースでしてきている企業も出てきていると思うので、今後の日本のエレクトロニクス企業の動きには結構期待していたりします。