先日、kawatanとちょうどじゃんがらラーメンを原宿で食べている時に話したことなのだが、間違いなく2010年はソーシャルアプリ、個人が作るコンテンツ、現在まだデジタルになっていないコンテンツの囲い込みがはじまる。大きいところでApple、SONY、Amazon、MS、小さいところだとGREE、Mixi、そしていくつものベンチャーである。
いままでベンチャーが決済、ユーザー管理、オープンソーシャルを含むプラットフォームをつくることなんて、とても開発費、サーバ代金がペイするものではなかった。しかし、近年のクラウドを利用した従量課金的サーバプラットフォームを利用することで、非常に高機能なプラットフォームを提供することが可能になりつつある。この時、さまざまな業界でさまざまな事情があるだろうから、それを十把一絡げにするのはあまり得策ではない。ただ、僕が知っているゲーム業界でこんな動きがあるんじゃないかなーっという点はまとめてみたい。
2009年の簡単な総括
2009年、ゲーム業界には急速な変化がおきた。その主役はMixi、Facebookに代表されるソーシャルゲーム市場の本格化、それと袂を同じにする携帯ゲーム業界の本格的な熟成だ。GREE、DeNA、Mixiに代表される携帯ゲームコンテンツ市場は2008年に4835億円に達しており、2009年の予測ではこの携帯ゲームコンテンツ市場がPS3、Wii、DS、PSPに代表されるおよそ6000億円のコンソールゲーム市場を抜くことが予測されている。なお、世界市場でみた場合、日本のゲームメーカーは3兆円規模の市場を作成しており国内はそのおよそ2割が相当している。
2009年に携帯ゲーム市場がコンソールゲーム市場を抜くという予測が発表されたときに、やはりゲーム業界ではそれなりの衝撃が走ったと思う。もちろん、現在のゲーム市場の主役が欧米となっており、日本市場の伸びはもうなかなか期待できないのは、よく知られているが、それでも多くのゲーム業界の開発者は一部の企業を覗き海外で売れるソフトというのを試行錯誤している状態だからだ。いや、試行錯誤するという表現はあまり的確ではない。海外で売れるソフトを作る方法論はある程度固まりつつあるのだ。それは、売れるソフトを作れるプロデューサーを抱え込み、内製・外製にこだわらず生産性の極めて高いゲームエンジンを使い、資本を一気に投下して、おもしろいソフトができたら一気にプロモーションをかける。そうだれでも聞いたことのあるハリウッド式のコンテンツ制作方法だ。
だが、この方法はEAやActivisionのような大資本をもったメーカー以外になかなかうまくできない。というのも、上記方法でおもしろいソフトを作れるようになるには、また別のノウハウが必要なのだが、そのようなノウハウを構築するためには、ある程度の失敗も許容できるゲームコンテンツのポートフォリオを形成する必要があるが、そのようなことができる大資本を備えた企業は限られる。そんなわけで、2008年から2009年にかけて特に欧米のゲーム企業、一部日本のゲーム企業においても統合が一気に進んだ。その代表が世界最大のオンラインゲーム企業ブリザードとCoDという世界でもっとも売れるゲームを持つアクティビジョンの合併である。
まぁ、そんなわけで、現状のゲーム市場は
- 今後、まだまだ成長が期待できる携帯・ソーシャル・ミニゲーム市場
- ハリウッド方式の開発方法、ニッチ・特定分野を攻める開発方法など方法論が明確化し、市場が固定してきたコンソールゲーム市場
に2分され、ベンチャー企業、小中規模の企業が携帯・ソーシャル・ミニゲーム市場に、世界で勝負するハリウッド的なコンテンツ、またはニッチ・特定分野を占有するコンテンツが覇権を競うコンソールゲーム市場でそれぞれ勝負を繰り広げることになると思われる。
2010年のソーシャルゲーム市場
未来を予測するのは難しいのだが、ここではソーシャルゲーム市場について考えてみたい。まず、最近いくつか手元でMixiアプリをやってみた感想であるが、あの敷居の低さは反則的である。友人からMixiアプリの招待、報告という形でほぼSPAMメールと変わらない内容のメッセージが送られてくる。kawangoさんも以下のように述べているが、個人的にもMixiアプリの本質は「敷居の低さ」と「その敷居の低さを生かす友人から送られてくるほぼSPAMメールとかわらないアプリへの参加招待メッセージ」であると思った。
mixiアプリとはなにかという結論が出た。ソーシャルアプリどうこういうが、流行った本質はSPAMメールをユーザが代行して送るシステムにある。人間関係性の希薄なGREEやモバゲーでも成立している理由がそこにある。
以下のFREEでも述べられているが、人間にとってもっとも大きいコストは「何か行動を起こすかどうかの認知的判断コスト」である。なお、このFREEは2009年の僕のNo.1おすすめ本であることも付け加えておきます。
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iPhoneゲーム市場について
iPhoneゲーム市場がどうなるか?というのは最近のゲーム業界の大きな話題の一つである。iPhoneが切り開いた個人がアプリを作り、だれでも販売可能にするという方式が、どのように押し広がっていくか?という点を考えた場合、はっきりいってiPhone単独でみた場合、iPhoneゲーム市場にはいまのままでは未来はない。まず、そのプロモーションの難しさ、価格押し下げ圧力の強さ、多すぎるアプリストアと参入障壁が低すぎる以外にいいところがあまりない。
しかし、ゲームコンテンツをより多角的なものととらえた場合、話が変わってくる。iPhoneアプリに参入したベンチャーが現状大挙してソーシャルゲーム市場に参入しようとしている現状を考えると、コンソールゲーム市場ではおなじみとなった企業としてのゲームポートフォリオの充実という概念が、iPhoneゲーム、ソーシャルゲーム、携帯ゲームという観点でより重要になってくると思われる。このあたりの市場をまるまる押さえるようなiPhoneアプリ、ソーシャルゲーム、携帯ゲームを共通で扱うフレームワーク、ゲームエンジン、プラットフォームというのが、おそらく2010年のメイン・ホットトピックになるだろうと予測する。
まとめ
そんなわけで2010年のゲームコンテンツ・プラットフォーム事情を総括してみました。まだ、考えをまとめきれていない点もありますが、何かの参考になりましたら幸いです。これが2010年最初のエントリーになりましたが、今年もよろしくお願いします。