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スゴ本を読む時間のない人のための「新教養主義宣言リターンズ 訳者解説」山形浩生

山形浩生が最近訳した本の解説をひたすら集めた「新教養主義宣言リターンズ 訳者解説」山形浩生を読みました。

訳者解説 -新教養主義宣言リターンズ- (木星叢書)
訳者解説 -新教養主義宣言リターンズ- (木星叢書)
おすすめ平均
stars世界を日本に紹介してくれる貴重な訳者による解説本
stars山形さん、良い意味で変態だ0 (^o^)/
starsこれを読んで元の本を読んだ気になりそう
stars「訳者のあとがき」だけを集めた珍しい本。

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これはかなりの変化球ですが、おもしろい本です。山形浩生氏というと、50ページにおよぶ解説を書いたりすることで有名なのですが、この解説を読むとあら不思議、その本を全部読んだ気になります。たとえば、サイバー法やインターネット上での著作権、これからの規制の方向性、果てはインターネットを利用して実現する新しい民主主義に関して述べたレッシグのCODEという書籍があります。
CODE VERSION 2.0
CODE VERSION 2.0山形 浩生

おすすめ平均
starsすごい本だと思う
starsサイバー法を勉強するなら必読の書
stars訳はそれほどひどくはない
stars読むに耐えない酷い訳

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これは、確かにものすごくおもしろい本で、この本を読まずにインターネット上の規制について語ってほしくない、というところまで議論を掘り下げている正真正銘のスゴ本なのですが、あまりにも論理展開がアクロバティックすぎて、普通の読書気分では内容を理解するだけで精一杯かと思います。
しかし、あら不思議、CODEに付属する山形浩生氏の解説を読むだけで、CODEの内容をかなり読んだ気になれます。CODEも巻末の484Pから山形浩生氏の解説が始まるのですが、この解説最初に読んでいれば、理解がもっと早かったなーっと前から思っていました。そのようなレベルの解説がまとまってくれれば、ぶっちゃけほとんどの書籍は読まなくても、その論理の骨子は理解できると思います。また、実際に理解できると山形浩生氏も書いています。
あと、山形浩生氏の最近の読書への問題意識が結構おもしろくて、山形浩生氏は本書の中で日本の読書人は基本的に理解力が足りないと本書の序文で述べています。

ベストセラーになった本を書店で立ち読みすると、ほとんどは、一行ですむ話を、一章、いや一冊に引き延ばしているだけ。そして、アマゾンのレビューなどを見ると、多くの人はその一行すらきちんと理解できていない。

上記の認識があり、その本の骨格を説明する解説を書き、理解を手助けするようになったとのことです。そもそも山形浩生氏の翻訳する本は、デネットの自由は進化するなどを筆頭にほぼ現代知性の最前線を手がけますので、その挫折する確率は結構高いと思います。そのような中で本書のようなその書籍のエッセンスを取り出した本は非常に価値があり、またその内容もアクロバティックです。
以下の山形浩生氏のWIREDなどのコラムを集めた、前作の新教養主義宣言も非常におもしろい本だったのですが、今回ももんくなくおすすめです。

新教養主義宣言 (河出文庫)
新教養主義宣言 (河出文庫)
おすすめ平均
stars高校の図書館の本棚にさりげなく置いてあって欲しい本
starsパブリックな知への信頼
stars非常に惜しい教養啓蒙への試みの欠落

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最近のバズワードを取り扱ったり、自己啓発の本もいいですが、たまにはこういうどのように役に立つのかわからないがスゴ本のエッセンスが詰まった本を読むのも悪くないと思います。