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蒼井そらが老師と呼ばれる中国のコンテンツ事情

どう考えても笑い話ではあるのだが、人気AV女優で抜群のおっぱいを持つ蒼井そらがTwitterを始めたところ、大量の中国人からフォローされ、「老師」と呼ばれる事件があった。

要は日本のAVは東南アジア、特に中国では非常に人気があり、その中でも蒼井そらは抜群の人気を誇っていたため、蒼井そらのアカウントということで中国人Twitterユーザーが大挙してフォローしたようだ。
さらにその後、中国人ユーザから以下のようなつぶやきがあり、

蒼井さん、PayPal*のアカウントを作ってください。お金を払いたくなくて海賊版を見ているのではなくて、正規版が手に入らないからなのです。なのであなたにきちんとお金をお支払いしたいと思います。

これに対して蒼井そらが以下のようなエントリーをブログに掲載したりして、かなりしっかりした一面を見せるなど、なかなか見所の多い事件だったと思う。

中国の動画コンテンツ事情

あまり知らない方もいると思うので、簡単に中国の動画コンテンツ市場の状況を書いておくと、日本のアニメ、ドラマ、その他のすべての有料コンテンツを中国では無料で閲覧することができる。例えば、中国の大手動画サイトYouku.comで「涼宮」を検索してみれば「涼宮ハルヒの憂鬱」の動画がすべて検索できることは確認できる。もちろんまだDVD化されていない映画の「涼宮ハルヒの消失」もある。この国の著作権侵害に関して不可能はない。

しかし、この中のどれかにアクセスした場合、「The clip has been blocked in your region.」というメッセージが表示され、日本からこのコンテンツを閲覧することは出来ない。たまに中国出張に行く人が暇なときに日本で公開中の映画をYouku.comで見ているという話を聞くが、これらのコンテンツは中国ではもちろん視聴可能である。
この論理はこうだ。基本的に著作権侵害は親告罪である。コンテンツホルダーが異議申し立てや告訴をしない限り、問題となることはない。そして、多くのコンテンツホルダーは中国の現地法人を持っていない。なので、中国では日本からのアクセスを遮断しておけば、基本的には日本側のコンテンツホルダーのビジネスを邪魔することはなく、中国国内にコンテンツホルダーが進出したときにはじめて動画の削除に対応すれば良いと考えている。しかし、中国で動画サイトをスタートできるのは、そもそも中国政府の許可が必要であり、中国国内の企業と資本提携してジョイントベンチャーを作るしかなく、さらにそこにも中国政府の許可が必要だったりして、ほぼコンテンツホルダーが中国で動画ビジネスをスタートすることはほぼ不可能になっていたりする。もちろん中国ではDVD販売などもできるわけがないので、結局著作権侵害の動画を取り締まるスキームがなく、野放図になっているわけだ。実は似たようなスキームがゲーム業界でもあり、台湾や香港ではだいぶ状況は変わってきたが、中国本土で儲けるのはほぼ不可能だったりする。

中国に文化的に進出したコンテンツ市場をどのように活かすか

さて以下のPodcastでもトークしたが、ゲーム、アニメ、ファッション、AV、グラビアなど中国や東南アジアには本当にたくさんに日本文化が進出している。

しかし、これらをうまくマネタイズできているかというと、ファッションは日本のファッション雑誌が一定の地位を占めるようになったものの、他のコンテンツに関してはすべて無料でコンテンツホルダーと関係なく楽しまれているというのが現状である。で、結局この部分をどのようにマネタイズするかなのだが、例えばゲーム産業では課金がシステム的に可能なオンラインゲーム以外では、スクエニの和田社長が以下のように述べているように民間の努力では、どうにもならない参入障壁が存在しているのが現状なのだと思う。

知財戦略?業界人発言:知財戦略という語感が高級なんで話がいつまでたっても浮世離れしていますが、はっきり言って(というか何度も言っていますが)、ゲーム業界としては、海賊と隣国の参入障壁の2点だけ対応頂ければ他は考えて頂かなくて結構です。その他は民の専管事項。 #c_policy

そんなわけで、このあたりは結構コンテンツ市場の政策的な重点課題なのかなーって思っている次第です。