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テクノロジーカンパニーにおける競争優位性について

テクノロジーカンパニーにおける競争優位性とは何なのだろうか、ということをちょっと考えている。ベンチャーやっている人からみれば自明のことだったりするのだろうが、大企業で働く立場でこんなことを考えてみるのも、まぁ、無駄ではない。

Webベンチャーにとってのテクノロジー

Webベンチャーにおける競争優位性というものを考えると、Web業界に属していない僕からみると、どうもテクノロジーの寄与は限定的なのではないかと思える。もちろん組織内にイノベーションのエンジンを持っておくことを非常に重要なのだが、そこで重要なのはスターエンジニアによるハイレベルなテクノロジーではなく、良く組織化され、問題に対して複数人で効率的に取り組んでいくプロフェッショナルの集団、もしくは問題を効率的に処理できるプロデューサー的なポジションの人がどれくらいの厚みで存在しているか、という話なのではないか、と。プロデューサー的な話はkensuuさんの以下の記事なども少々関係ありそうだ。

Webの技術に関して、最先端はすごい勢いで進歩しているが、ある程度までのスキルアップはほとんど高速道路が出来ている。スクリプト言語を一通り触れて、サーバ側の知識もあるエンジニアを育成するのにかかるコストはある程度の規模の企業であれば、それほど高くないのではないだろうか。もちろん、なかなかノウハウが言語化されていない部分も多々あると思うが、それであってもおそらくあるレベルに達することは難しくないだろう。

テクノロジーカンパニーの競争優位性

ということは、そのWeb企業がテクノロジーカンパニーとして戦略を持ってテクノロジーに投資する場合、チームのビルドアップと自分たちが自分たちの利用するオープンソース技術にコミットすることで、そのオープンソース技術のパイオニアになるという側面が重要なのではないか。
例えば、友人のid:umitanukiがCTOを努めるフォルシアはid:umitanukiがPostgreSQLのコミッタとして活躍しており、例えばこの前PostgreSQLのメインにウィンドウ関数を実装した。

id:umitanukiが機能拡張したPostgreSQLを利用した検索プラットフォームSpookは複雑な検索条件を高速に処理可能なプラットフォームとしてほとんど旅行会社のWebプラットフォームのデファクトスタンダード的なポジションになっており、このような事例を聞いて、テクノロジーカンパニーの競争優位性を保持する戦略の一端を体感することができた。

投資する技術の選択について

もうちょっと続けてみる。テクノロジーカンパニーについて考えたとき、kawangoさんの以下のつぶやきを思い出した。

ネットのマーケティングのコンサルなんてSEO程度しか実用的には期待できないから、僕ならやっぱり自社内に部隊をもたないと駄目だと思う。それはそれでアホ部隊をつくるリスクはあるけど、そこがクリアできないと長期的に勝てる気がしない。

いまのIT業界はちょっと優秀な大学の優秀な学生を何人か抱えたベンチャーは”技術力がある”とか名乗れる程度の底の浅さしかないから、自前で部隊つくってもある程度の資金が投入できるなら十分やっていけると思う。

この底の浅さっていうのがWeb業界では非常に重要で標準がある、体系がわかりやすいってことも関連している。底の浅さによって、いろんな人が参入しやすくなっており、非常に技術の変化も早い。他方、例えばLinuxカーネルの開発者に関して以下のような興味深い記事があった。

僕がこの記事で面白かったポイントは、以下の彼らが現在10年前なら投げ出したような深いレベルの問題に到達しているという記述にある。

Linux カーネルの開発者 Andrew Morton 氏も開発者の高齢化を認めており、それと共に開発者らが「疲れてきており、以前のようなやる気や熱気で開発に取り組む人々は減った」と指摘する。ただし、これは開発者がより深いレベルでカーネルを理解し、修正に伴う複雑さに取り組む姿勢があることも意味しているという。コードも人も複雑になり、現在の開発プロセスには「我々でさえ 10 年前なら投げ出したような」要素もあるとも述べたとのこと。

僕が働いている領域もどちらかというとこっちに近いのでなんとなくわかるが、カーネルは今までの互換性、安定性などを問う、いわば積み上げタイプの技術だ。積み上げの技術は、今までの発展の経緯や実装の歴史も踏まえて最適実装が決定されるため、新しい開発者がなかなか参入しにくい。
恐らく、この参入しにくい技術と高速道路が引かれた技術をどのようにブレンドするかというのが、テクノロジーカンパニーの一つの命題なのだと思う。

まとめ

まだ途中だが、最近考えていることをまとめてみた。あとプラットフォームの問題と以下でまとめた起業についての考察も絡めて、続きをもうちょっとだけ書く予定。