文化系トークラジオ Lifeの文化系大忘年会2010で話題になっていた2010年のCD売上年間ランキング。確かに非常に特徴的なランキングとなっている。というのも、嵐とAKB48しかいない。
1位 Beginner / AKB48(954,283)
2位 ヘビーローテーション / AKB48(713,275)
3位 Troublemaker / 嵐(698,542)
4位 Monster / 嵐(696,022)
5位 ポニーテールとシュシュ / AKB48(659,959)
6位 果てない空 / 嵐(656,343)
7位 Lφve Rainbow / 嵐(620,057)
8位 チャンスの順番 / AKB48(596,769)
9位 Dear Snow / 嵐(591,207)
10位 To be free / 嵐(516,142)
(カッコ内は売り上げ枚数、調査期間は2009年12月28日〜2010年12月20日付)
参考までに2009年を見るとAKB48は影も形もない。さらにAKB48の影響で2010年の売上枚数は2009年と比較して底上げされており、2009年では3位に入ることができる51.3万枚という枚数も2010年では10位にも入ることができない。
1位 : 65.7万枚 … 嵐/矢野健太 starring Satoshi Ohno「Believe/曇りのち、快晴」
2位 : 62.1万枚 … 嵐「明日の記憶/Crazy Moon~キミ・ハ・ムテキ~」
3位 : 51.3万枚 … 嵐「マイガール」
4位 : 48.9万枚 … 秋元順子「愛のままで…」
5位 : 42.3万枚 … 嵐「Everything」
6位 : 37.8万枚 … B'z「イチブトゼンブ/DIVE」
7位 : 37.7万枚 … KAT-TUN「RESCUE」
8位 : 36.0万枚 … 遊助「ひまわり」
9位 : 33.1万枚 … KAT-TUN「ONE DROP」
10位 : 29.9万枚 … 関ジャニ∞「急☆上☆Show!!」
集計期間 2008/12/22付〜2009/12/21付
こうやってみると何が起きたかは明らかで2009年のランキングにまるまるAKB48が大爆発して上に積まれたと考えるのが正しそう。ここでAKB48すごいねーということで終わってもいいのだが、Lifeで提示されたテーマについても考えてみたい。
熱量をどのように高めるか
嵐、AKB48で思いつくのは二つとも非常にシステマティックなプロデュース手法から産み出されたグループであること。ジャニーズ、秋元康のコンテンツプロデュース能力は今更語ることもないくらい素晴らしいのだが、AKB48、嵐に共通するのはこの二つのグループはCDが売れているというタイプのグループではなく、むしろコンサートなどのライブで非常に勢いがあること。また、このグループのためならいくらでもお金を投下したいと考えている熱心なファンがいることがある。AKB48のCDはAKB総選挙の投票券、握手券も同封されていることもこの文脈から理解できる。
このような現象を眺めてみると、このコンテンツを売るのが難しい時代にそれでもなおCDというオールドメディアを売ることができるのは、システマティックにユーザ内の熱量を高めていき濃いファンを作り、そこから波及する形でコミュニケーションとしてファンを拡大していくような方法論がみえてくる。Perfumeやモンスターハンターのような今年爆発したコンテンツを見てもにたような構図がみえてくる。
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熱量の低い時代に高い熱量を作る方法
現在のコンテンツ消費スピードはとんでもなく早い。特に2ch、ニコ動などで「終わコン」などと呼ばれる終わったコンテンツになるスピードがとんでもなく早く、的確なタイミングで的確な燃料を投下しないと、すぐコンテンツは「終わコン」扱いされてしまう。これを防ぐのが、熱量の高いファンなのだと思うが、AKB48はまずいつでも会えるAKB48劇場という形でこの熱量を作った。モンスターハンターなども考えてみると、その異常に中毒性が高いゲーム設計が熱量の高いファンを作り、さらに年に一度はきちんと新作をリリースすることでその熱量を保っている。モンスターハンターの成功はAKB48の成功と比較しても遜色の無いまさに奇跡的な成功だと思うが、逆に今の日本でコンテンツを売りまくるにはこの熱量の高い「はまった」状況を作る必要があるのだと思う。
CDというオールドメディアの先端に何を見るか
音楽において、コンテンツの利用がCDというメディアから「着メロ」や「音楽配信」(日本ではそれほどでもないが)、「カラオケ」などにシフトしている中で、この嵐とAKB48がCDを売りまくっている現状から、今後本などのメディアでもどのようなことが起きるかを考えることができる。つまり、たくさんの取捨選択の状況にあり、コンテンツとしての「書籍」を選び、自分の気に入ったものを読むという形が一般化していくと、では本というメディアでわざわざ「書籍」を買ってくれるものを何か?ということだ。ここに同じようなプラットフォームの方法論まで持ち込むことができると思わないが、もしドラやサンデルの正義論などのヒットを見ると、書籍というコンテンツの性質はまさにネット上の情報のフローのなかでどれくらい高い熱量を発生させることができるかとかなに似ているような構図もあるような気がする。このあたりは2011年で非常に動きがありそうな部分なので非常に楽しみである。