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今の日本だからこそ35年の住宅ローンを背負う本当の理由

ちきりんさんはここまで更新頻度が高いなら早めに独自ドメインでブログを始めたほうが良いよ!などと余計なことを考えながら以下のブログを読みました。非常に面白かったのですが、指摘の根本の部分で間違いがある気がします。それは、今の日本では10年ローンよりも、35年/20年ローンを組む経済合理性が高いためです。

そもそも住宅を買えるのは、銀行から見てお金を貸しても良い、という人々です。お金を借りてみたらわかることですが、基本的にはある程度のサイズの企業で3年以上勤務していること。これが35年ローンで銀行がお金を貸してくれる基本条件です(もちろん例外もたくさんありますが)。さらに、住宅を買うということは少なくとも今の仕事をある程度の期間続ける意思がある。自分の仕事・職場が変わる可能性がある場合、なかなか住宅は買いませんよね。で、このタイプの人たちってかなり優秀な人が多いと思います。少なくとも2、3千万円であれば10年ローンくらいで返せるくらいの給料はもらっている場合が多い。

フラット35Sと住宅ローン減税という最強コンビネーション

しかし、今のご時世あえて10年ローンでお金を借りる必要もないのです。それがご存知フラット35Sです。

はっきり言ってしまえば、政府は国民に住宅を買ってほしくてほしくて仕方がないわけです。なので、フラット35Sの10年間1%金利優遇のような意味のわからないことを平気でやってしまう。例えば、りそな銀行で借りれば35年ローンで最初の10年の金利が1.55%、その後は2.55%です。ついでに20年ローンで借りれば金利はなんと最初の10年間は1.27%、その後が2.27%です。

同じ10年間という期間でで思い当たることと言えば、住宅購入後10年間継続する住宅ローン減税です。簡単に行ってしまえば10年間住宅ローン残額の1%が減税されます。3000万円借りれば30万円が毎年返ってくると思っていただければ良いです。この日本の異常な状況を金融日記の藤沢数希氏も以下のように述べています。

住宅ローン控除、家賃の消費税免除、日銀によるREIT購入。不動産業界はなぜか非常に手厚く保護されてるというか、官民あげて土地の値段がさがることを必死に食い止めてるよね。不動産の値段が下がってそんなにこまるのかなぁ。普通の人は不動産の値段が下がれば下がるほど得するよ。less than a minute ago via web

もう、お分かりだと思うのですが、10年程度でお金を返すあて(収入・能力)がある人にとっては、現在の金利は35年/20年ローンでお金を借りても大きな違いがないのです。そのように日本政府が仕組んでいるからです。僕も特に今の状況でわざわざ支払いがきつくなる10年ローンを借りる理由が思いつきません。フラット35S+住宅ローン減税の組み合わせはそれくらい強力です。だって、10年たって住宅ローン減税が終わったタイミングで、一気に繰り上げ返済してしまえば良いのですから。よって、僕は今の状況で35年/20年ローンを組む人がおろかだとは全く思いません。むしろ経済合理性が高いと思います。

というわけで、ちきりんさんの言う事はもっともなのですが、現在の日本が異常な状態であるということが結構原因なのではないか、と思います。もちろん5000万円とかをフルで35年ローンで組んで高級マンションを買ってしまう困ったちゃんもいるとは思いますが、そんな人は現実的には少数派なのではないでしょうか。

[追記]以下のネタも書いてみました。

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