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本当に「"つぶやき"では革命は起こせない」のか?

一年ほど定期購読をしていたNewsWeekの定期購読を解除して、今年からクーリエ・ジャポンに切り替えた。NewsWeekはアメリカの視点を学ぶには、日本の雑誌では最適だと思うのだが、最近特集の内容が薄っぺらいことが多く、次はもうちょっと多角的な視点を構成する雑誌にしたいなーと思っていたところ、クーリエ・ジャポンがヒットした。と言っても、これもずっと続けるというよりは、一年読んでみて、次どうするかをまた決めるつもりだ。GQとかも特集が非常におもしろいので、候補だったりする。なので、現在我が家で定期購読している雑誌は「クーリエ・ジャポン」と「暮らしの手帖」の2誌となった。暮らしの手帖はおもしろいですよ、おすすめ。

さて、そのクーリエ・ジャポン3月号に掲載されていたマルコム・グラッドウェルの「"つぶやき"では革命は起こせない」が非常におもしろかった。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 03月号 [雑誌]COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 03月号 [雑誌]

講談社 2011-01-25
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詳しくはクーリエ・ジャポンを読んで欲しいのだが、筆者の見解による昨今のエジプトの騒動、イランの選挙などでFacebookやTwitterが大きな原動力となっているという報道がなされているが、例えば#iranelectionのハッシュタグで話題になった、イラン選挙も西側諸国のジャーナリストがハッシュタグを活用してツイートに目を通していただけで、実際のイランではペルシャ語を通した生のツイートはほとんどなかったらしい。やはり社会運動の本質は強力なヒエラルキと指導者が存在する上での組織的な活動であり、筆者はこの従来型の社会的活動を「強い絆」、SNSやTwitterを媒介とした力を「弱い絆」と述べている。そして、弱い絆から実際にハイリスクな社会ん運動が生まれるということはほとんどない、というのが筆者の主張だ。しかし、おもしろいのはここからで、「弱い絆」には「弱い絆」に非常に適した形の活用方法が多数存在する。例えば、骨髄移植の適格者が現れなかった場合、「○○を助けろ」というキャンペーンを行ったところ、2万5千人もの骨髄バンクへの新規登録者が現れ、実際に患者が助かった例が挙げられている。つまりフェイスブックやTwiterのような「弱い絆」は「多大なる犠牲を払う可能性のある運動」に参加するモチベーションとしては弱いが、多数の少しだけの善意を結びつけて何かを成し遂げるプラットフォームとしては非常に適している。
このことから、筆者は従来の社会運動とオンライン型の社会運動を明確に分けて考え、オンライン型の社会運動で変えることができるものもあるが、強力な社会的権威に立ち向かう場合は、より「強い絆」を意識する必要がある、という結論を述べている。
この主張は非常にもっともで理解しやすい。ただ、この議論をベースにSNSによって作られる「弱い絆」をどうやって「強い絆」にするか、または「弱い絆」を大量に集めてどうやって社会的権威に立ち向かうか、ということを考え始めると非常に面白い。恐らく社会運動家などはこのようなことを日夜考えているのだと思うが、「弱い絆」は非常に強力なツールになることはすでにオバマ選挙で証明されている。以下の本は津田さんが2010年のベストにLifeであげていたが非常に読む価値がある。
「オバマ」のつくり方 怪物・ソーシャルメディアが世界を変える「オバマ」のつくり方 怪物・ソーシャルメディアが世界を変える
ラハフ・ハーフーシュ 杉浦茂樹

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今回のエジプトの騒動ではGoogleとTwitterが手を組んで、ネットワークなしでtweetを行えるようなシステムを作成している。

米Googleは1月31日、ネット接続が遮断されているエジプトでも、音声回線を使ってTwitterに投稿できる「speak2tweet」を立ち上げた。
エジプトではインターネット接続がほぼ全面的に停止されているが、音声通話は可能だ。speak2tweetでは、所定の電話番号(+16504194196、+390662207294、+97316199855)に電話をかけてボイスメールを送ることで、#egyptのハッシュタグ付きでメッセージを投稿できる。投稿されたメッセージは、上記の電話番号に電話をかけるか、speak2tweetで聞くことができる。

ハッカーは目の前におもしろい課題があると、その課題にすぐに取り組みたがるものだ。どうやって「弱い絆」で革命を起こすか?なんておもしろい課題を世の中のハッカーがほおっておくわけがない。