非常に刺激的な記事。
僕のチームラボ社長猪子寿之氏好きは昔からで、出演する番組やUSTは大体チェックしてるし、昔書いた以下のエントリーをきっかけに一度お話させて頂く機会もあった。
今回の対談も非常に面白く読んだのだが、最近よくわからなくなってきたのは、小飼弾氏が述べている「1000人の凡人が一人の天才に負けるエンジニアリング」という言葉。というのも、昔は僕もエンジニアリングは一人の天才で全部ひっくり返される可能性があるなー、と漠然と感じていたが、最近はそれって違うんじゃないかと思っている。
一人のエンジニアが全てをひっくり返すにはレバレッジが必要
特にここでシリコンバレー賛美を始めるつもりはないのだが、基本的に一人のエンジニアが全てをひっくり返すにはレバレッジが必要となる。レバレッジとは、簡単に言うと、ものすごいおもしろいものを一人のエンジニアが作ったときにそこからどれだけお金を集めることができるか?という点。ただ、これに尽きる。
エンジニアはすごいコードを書けるだけではなく、作ったものがどれほどおもしろいかをうまく見せることができるかどうかが重要で、この時のインパクトで、どれくらいお金を集めることができるかが決まる。シリコンバレーはこの時のお金をかき集めるシステムが非常に発達しており、この時のレバレッジこそが「1000人の凡人が一人の天才に負けるエンジニアリング」なのかなと思う。そんなわけで、僕は個人的には「1000人の凡人が一人の天才に負けるエンジニアリング」というのはあんまり日本ではなじまないんじゃないかな、と思っている。
そもそも日本の企業で必要なものは突き抜けたものを作る力
良く日本の企業がiPhoneをつくることが出来なかったのは、技術力がなかったからではなく、iPhoneのある未来を描ける経営者がいなかったから、という話をする人がいる。僕はこれは完全に嘘っぱちだと思っている。
たとえばタッチパネルのレイテンシ一つをとってもiPhoneに匹敵するデバイスをiPhoneができるまで作れた日本の企業がいただろうか。少しタッチパネルをかじったことがある人ならわかると思うが、iPhone 3Gがあの時期に到達したタッチパネル技術のたかみは本当にすごい。iPhone 3Gの時期にあのタッチパネルの精度、レイテンシを実現したのはタッチパネルベンダーを巻き込んだデバイスの研究開発と、描画バッファを複数持つことによるレイテンシを極力排除したOSレベルでの最適化された描画システムが必要となる。
この点だけ見ても、当時日本の企業であの滑らかさとレイテンシを実現するタッチパネルを作れるものはいなかった。だから、僕らは認める必要がある「そもそも突き抜けたものを作る技術力がなかった」ということに。なので、もう一度きちんと考える必要がある。