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インターネットという曖昧なものを理解する最初の一歩として「インターネットのカタチ」はスゴ本

「インターネットのカタチ」を読んだ。現在のインターネットがどのように作られているかを示した非常に良い本である。すでにインターネットなしではビジネスは存在しないと言っても過言ではない現状で、ヘタなビジネス啓蒙書を読むよりも、多くの人にまずは「インターネットのカタチ」を読んで欲しい。たぶん、短期的にも長期的にもその方が自分にとって血肉になる。

インターネットのカタチ もろさが織り成す粘り強い世界インターネットのカタチ もろさが織り成す粘り強い世界
あきみち 空閑 洋平

オーム社 2011-06-25
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多くの人が指摘していると思うが、この本を読んで村井純教授の「インターネット」を思い出した。この本は大学生になったころに読んで、インターネットのというものの思想を学んだ。思想という点では、この本の構成は「UNIXという考え方」を思い出す。「インターネット」を読んでインターネットの思想を、「UNIXという考え方」を読んでUNIXの思想を学ぶということが、僕が学生のころは鉄板の組み合わせだったと思う。
UNIXという考え方―その設計思想と哲学UNIXという考え方―その設計思想と哲学
Mike Gancarz 芳尾 桂

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しかし、今、インターネットというものがなんなのかを学びたい人にとって「インターネット」はちと古い。その思想に変化はないかが多くの技術は更新されている。では、例えば技術から学ぼうという人がその思想を理解するために「マスタリングTCP/IP」などを読めというのも酷である。
マスタリングTCP/IP 入門編 第4版マスタリングTCP/IP 入門編 第4版
竹下 隆史 村山 公保 荒井 透 苅田 幸雄

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そんな「インターネットという漠然としたものを理解したい」という人にとって、「インターネットのカタチ」は最高の良書だと思う。では、内容を見てみよう。
「インターネットのカタチ」は技術書というより読み物に近い体裁を取りながら、巻末に多様なインターネットを観察する方法を紹介するなど、技術入門書としても一級の構成となっている。読み物部分は主に近年のエジプトのインターネット離脱事件、YouTubeに全世界からアクセスできなくなった事例、中国のグレートファイアーウォールなどのユースケースを利用して、インターネットがどのように構成されているかを示している。
本を読みながら、これはとても巧みな構成だと思った。例として適切か、ちょっと微妙かもしれないが、受験勉強で物理などの理系科目をやった人は「詳細に時間を掛ける前に、まずはひと通りその科目の全項目を終わらせろ」と言われたことがある人がいるのではないかと思う。詳細を学ぶ前にまずはその全体を眺めてみて、自分の今やっていることが全体のどこに位置するかを俯瞰することが、最終的に学習の効率を上げるという話しだ。「インターネットのカタチ」で取られた全体を俯瞰しつつユースケースを利用して背景にある技術を説明する手法は、このユースケースがそもそもインターネットという全体を俯瞰する要素を含んでおり、インターネットがどのように壊れたという具体的な事例そのものがインターネット全体を俯瞰することにつながっていた。これはすごいと思った。
そんなわけで、エンジニアもそうでない学生、社会人の方々にもインターネットのカタチはおすすめである。内容が濃いが、本としては薄い(ページ数が少ない)ので、一日まとまった時間があれば読むことができると思う。夏休みの残りや土日などを利用して、是非読んで欲しいと思った。