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In The Plex(グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ)を読みながら改めて考えたGoogleのビジネスモデル

2012年になって、最初に読んだ本はGoogleのこれまでの成長の経緯をスティーブン・レヴィがまとめたIn the Plexでした。

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へグーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
スティーブン・レヴィ 仲達志

阪急コミュニケーションズ 2011-12-16
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この本の面白いところは、いままで伺い知ることの出来なかったGoogleの創業者や取締役がどのように考え、意思決定をしてGoogleを成長させたかに焦点を当てた点です。著者がGoogleの取締役会などにも参加して実際に買収などの意思決定が行われたところが生々しく掲載されており、これもすべてGoogle社内に潜入して取材することが許可されたスティーブン・レヴィのおかげだな、と思いました。広告事業がどのように立ち上がったか、また中国の検閲にどのように対応したかなど、これまでどの書籍でもまとまっていなかった情報が掲載されているので、まだ未読の方は是非読んでみて欲しいと思います。
この本を読んで、以下に書いたことがちょっと間違っていたというのが認識できました。

上記でGoogleは企業の成長ステージを一つ上げたと書きました。これまでのGoogleの利益の成長エンジンは検索と広告であり、この二つを抑えることでインターネットのサイズに比例してGoogle自体の利益が大きくなるという仕組みでした。この仕組自体は今も変わっていません。図で書くと以下のような感じです。(20%という数字は適当です。)

アンドロイド、Googleブックサーチ、画像検索などに徹底しているGoogleの基本戦略はインターネットにアクセスできるクチを増やし、さらに検索できるものを増やすことでインターネットに存在する情報のサイズ自体を増やすことで、そこに比例して発生する検索やページビューからアドワーズやアドセンスで利益を上げるというものです。これはインターネットのサイズ自体に利益と直結する非常に強固なビジネスモデルであり、このビジネスモデルが生まれた2章の広告の部分などは非常におもしろいストーリーでした。
ただ、実際に起きたことは確かにインターネットのサイズ自体は増えたものの、それ以上にFacebookというGoogleが情報を取得できない、検索対象にもならない、広告を載せることもできないサービスの巨大化でした。図表にするとこんな感じです。(20%という数字は適当です。)

つまり、インターネット自体のサイズ自体は増えたものの、それ以上にGoogleがカバーできない領域が増えてきてしまったのでした。これに対抗するため、Google+を立ち上げようとする動き(執筆当初はリリースされてないので、コードネームで呼ばれています)など、なぜGoogleがFacebookに遅れを取ったのかが描かれており、非常に面白いです。dankogaiはこれを"Do no evil"の呪いとまとめていますが、言い得て妙ですね。

本書は世界を変えた(or 変える)企業ができていくというのはこういうことなんだ、というのが実感できる意味で間違いなくこれまでのGoogle本で最高の本であり、現在のインターネットの巨大プレイヤーを理解する意味でも年始に読んでおいて損はないと思います。