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強いリーダーを求めるよりもチームビルディングを志向する先に成功がある

この前、NHKスペシャルの「リーダー論」という番組を見ていたら強いリーダーが必要という論調の意見が特に50代の管理職に多く見られた。ただ、最近いろいろと本を読みながら、この強いリーダーという概念にすごく違和感を覚えるようになった。というのも、最近たまたまなのだが、チームビルディングについての本をいろいろ読む機会があったが、なんとなく強いリーダーを求める先に日本での成功はないのではないかと思うからだ。

世界最高のイノベーションファームIDEOのチームビルディング方法

まずは以下はIDEOでチームを結成するときに人材をどのように分類し配置するかについてのノウハウが記載された本。

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材
トム ケリー ジョナサン リットマン Tom Kelley

早川書房 2006-06
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一般的にアイディアというものは、たまたまひらめく、ふわふわ浮いているものというイメージがあるがIDEOはそのようには考えていない。まず、人材の以下の10種類に分類し、それぞれの人材がアイディアを形にする様々なステージに配置することで、イノベーションを起こすアイディアを達成するということをチームビルディングとして捉えている

情報収集をするキャラクター
  • 人類学者:観察する人
  • 実験者:プロトタイプを作成し改善点を見つける人
  • 花粉の運び手:異なる分野の要素を導入する人
土台をつくるキャラクター
  • ハードル選手:障害物を乗り越える人
  • コラボレーター:横断的な解決策を生み出す人
  • 監督:人材を集め、調整する人
実現するキャラクター
  • 経験デザイナー:説得力のある顧客体験を提供する人
  • 舞台装置家:最高の環境を整える人
  • 介護人:理想的なサービスを提供する人
  • 語り部:ブランドを培う人

僕は、この問題を強いリーダーなどの属人性の高いものではなく、ルールとチームビルディングで解決するという考え方が好きだ。なぜなら、そもそも企業で強いリーダーというのは筆頭株主という組織において事実上の無敵の立場か、せめて社長という職業におけるプロフェッショナルであり社長業に関して有無を言わさない実績とノウハウを持つ必要があると思う。ただ、ユニクロなどを除けば基本日本企業の社長はサラリーマンの出世の最終地点であり、もちろん様々な経験はしてきていると思うが、決してポジション的に強いわけではない。このような立場のリーダーは調整や政治に様々な労力を割く必要が出てきてしまうので、結局企業にとっても最も重要なイノベーションにフォーカスできないまま辞めることが多い。なので、いっその事、強いリーダーで何かを達成することは諦めてチームビルディングとプロジェクトマネージメントを突き詰めることで何かを達成できるのではないかと考えている。
あと、チームラボに関して4年も昔に書いた以下のエントリーも、このトピックに関連して今読んでも興味深いと思っている。

チームビルディングという考え方はアジャイルとも非常に相性がいい

開発者なら一度はアジャイルという言葉を聞いたことがあるかもしれないが、このチームビルディングで問題を解決するという考え方はアジャイルとも非常に相性がいい。

アジャイルサムライアジャイルサムライ"達人開発者への道"
Jonathan Rasmusson 西村 直人

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アジャイルサムライはチームのメンバーとしてどのように振る舞うことがプロジェクトを成功に導くかを記した良書である。そもそもアジャイルとは常に動作する状態を保ちつつ、開発のイテレーションタイムを短くすることで開発のリスクを下げる方法である。アジャイル開発の詳細は上記の本を読んで欲しいのだが、このアジャイル開発を行う重要な要素として、チーム内でメンバーがどのように振る舞うべきかというのが定義されている。つまり、どのような態度を取ることが結果的に成果につながるかというのがわかっているわけだ。この概念は上記のIDEOのチームビルディング手法と一緒に考えてみるとアイディアと開発という二つの要素をつなぐ一つの鍵として面白いと思う。

強いチームの成功事例

ただ、チームビルディングだけではもちろん達成できないこともある。個人としての力が最終成果物に影響をあたえるのは当然の話しであり、そういう意味では以下の本が最近読んだ本で心に残った。

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力
スコット ベルスキ Scott Belsky 関 美和

英治出版 2011-10-25
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この本は過去にゴールドマン・サックスリーダー育成、でチームビルディングを担当し、その後起業家となったスコット・ベルスキがアイディアを形にするということにフォーカスしてその方法論をまとめた本だが、3章構成の中で第2章、第3章のテーマはそれぞれ仲間力と統率力であり、何かアイディアを形にするときどのようにチームを結成するか、チームとしてどのように動くかを突き詰めるというのが一番の早道であることはほとんどコンセンサスになっているのではないかと思う。
日本でもこれに関連したトピックでは最近読んだ以下のエントリーが面白かった。

日本のネットベンチャーで成功するにはどうしたらいいか?と考えた時に、雇用の規制などの制限を考えるに、「いい会社を作り、その中に優秀な人材を集め、その上でプロジェクトを動かしていく」という形じゃないかと思っています。
大規模リストラなどが少ないため、人材が流動化しないため、新規でプロジェクト型企業を立ち上げるのはやや難易度が高いのですね。
となると、順序としては
1:まずイケてる組織を作る
2:そこからプロジェクトを成功させる
3:成功しなくてもその組織で新たなプロジェクトを立ち上げる
という流れになるわけです。
じゃあ、なんでその組織に入るのか・・・となると、それはビジョンや理念に共感している人が入ることになります。いわゆる、ビジョナリーカンパニーに近いです。組織のビジョンに共感して、その組織に入りたいと思うことから始まります。
ビジョナリーカンパニーでいうところの、「まずバスの席に優秀な人をつかせて、そこから到達点を決める」という感じです。
シリコンバレーは、日本でいうと一企業に近くて、「シリコンバレー的な思想を持った人がそこに集まって、様々なプロジェクトに参加している」という場所なのかもしれません。「最先端のテクノロジーで世界を変える」というビジョンに共感した人が参加している、と。

この部分は本当に僕もそうだと思う。まずはチームビルディングを突き詰めていけてる組織を作る。たぶん日本ではその先にしか成功はない。

まとめ

たぶんベンチャーやっている人はこんなこと百も承知なのではないかと思いますが、チームビルディングに関して最近感じていることをまとめてみました。ご意見、ご感想などもしあれば、Twitterやっているので、@gamellaに送っていただければ。