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「起業をめぐるバイアス」を読んで考えたこと

yomoyomoさんのページ経由でしった首藤一幸さんがIPAに寄稿した「起業をめぐるバイアス」が面白い。

知識産業においてもはやお金で株式は渡せない

WIRED Vol.2で特集された「Yコンビネータ 」を例に出すまでもなく、世界的にベンチャーの初期にお金を出したいと考えている早期投資型のベンチャーファンドが隆盛を極めている。だが、このレポートを見るかぎり、すでに「Yコンビネータ 」がそうなっているように、お金を出す部分ではなく、人脈をつなげたり、成功に貢献することにどれだけコミットできるかをきちんと示さないと、例えば10%の株式なんてとても渡すことはできない状況にあると思う。それくらい、起業に締めるお金の必要性は低下したから。

知識産業においてリソースが成功のキーファクタではなくなったことや、経済システムに載らない価値提供が顕在化してきたことの原因は、1つは、個人がempower(力の付与)されてきたことであろう。それこそ、PCを1万円から数万円で買うことができ、1ヶ月数千円のインターネット接続料でネットにあふれる情報にアクセスでき、世界中の人と接触できる時代である。また、クラウドも個人を非常に強化した。それまで、世界中に向けてネットサービスを提供するには、データセンタにラックやサーバを借りるかまたは自身で設置し、それなりに太いネットワークを引き、サーバをメンテナンスするかその要員を雇うかする必要があった。金額にして、1ヶ月の最低必要額は数十万円である。それに対して、クラウドの一形態、Amazon EC2に代表される仮想マシン貸しサービスでは、1時間あたり数円からサーバを借りることができ、ネットサービスが流行るにしたがって、随時、サーバを増やして、または逆に減らしていくことができる。最低必要額は1ヶ月あたりせいぜい数千円である。初期投資がほとんど要らないことと従量課金であること、この2点が、個人にできることを大きく拡大した。同様に、個人の能力を大きく拡張する様々なネットサービス、具体的には、グループウェア、オフィススイート、SNS等々を無料かごく安価で利用できる時代である。

個人の力が増大しきった後にベンチャーファンドや起業支援がどうなるか

極論を考えるのが好きなので、こういう時に個人の力が増大仕切った後にベンチャーファンドや起業支援がどうなるかを考えてみたい。まず、才能ある個人(エンジニアやデザイナー)ができることが増えてきている中で、わざわざ法人を設立し社長になることを起業とするのではなく、より大きな仕事を個人として行うことに注力したベンチャーファンドや起業支援が増えてくると思う。となると、ベンチャー支援とは、今のお金を出すという部分はすっぱり抜け落ちて、「適切な組織を作ること」そのものにシフトすると思う。いや、すでにサイバーエージェントのベンチャー支援などはその方向にシフトしている。

上の記事は場所そのものがフォーカスしているが、個人をどれくらいエンパワーできるかにフォーカスすることがベンチャーファンドや起業支援にとって重要なトピックになることは間違いない。この時に例えば大企業に属する人が気軽にジョインして土日に貢献できたり、一人のメンバーが3つくらいの会社にジョインしたりと言った、今は才能ある人しかできないことがより柔軟にできる社会になればいよいよおもしろくなってくると思う。