GOETHE 2012年5月号の安藤忠雄特集が面白かったと書いたが、面白かった部分を紹介してみる。
![]() | 幻冬舎 2012-03-24
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多作とは稀有の才能である
安藤忠雄の仕事の理念に「多作が新しい発見につながる」というものがあり、秋元康も並行して100以上の仕事をこなすらしいので、二人の仕事術をつなげる一番の接点は「多作」という部分だと思います。この多作という言葉をきくと、僕はよく福田和也の「作家の値うち」の言葉を思い出します。それは「多作にもかかわらず質を維持できるのは稀有の才能である」という評価です。福田和也は栗本薫や江國香織に対してこの言葉を述べていたと思います。
秋元康から、「仕事をする時にどのような自分の優位性を考えますか?」という質問にかんして、安藤忠雄が「あるものを活かす」という回答をしています。例えば、瀬戸内海の直島に美術館を作ったときは、美術館を作ると美術品を買う金がないから、「アーティストがここに俺の作品を置きたい、という圧倒的な美術館にしてくれ」というのが、そのオーダーだったらしいです。この時に、ここにしかない「瀬戸内海」を活かした美術館を作成することにした、とのことなのですが、この「多作」と「ありものを活かす」という感覚が結びつく感覚が面白いです。
同業者に評価されないということ
安藤忠雄と秋元康のもう一つの似ているポイントとして「同業者に評価されない」というポイントがあげられています。
安藤忠雄が同業者に評価されていないとは必ずしも思えませんが、この安藤忠雄と秋元康の接点として「同業者に評価されない」というポイントを持ってくるのはおもしろいなー、と。思えば同業者に評価されないが市場や海外からは圧倒的な評価を得ている作家として村上隆が思いつきますが、なんかこのラインの人々のコンテンツ作りの方向性を考えると、多作である点とコンテンツの作成フローが工房的であるというポイントがあげられると思います。特に安藤忠雄の事務所でのスパルタぶりは有名ですが、コンテンツを作るラインを作れば作り込むほど日本では同業者に評価されなくなるのかなー、というのと、同業者受けを狙うことのリスクがあるのではないかと思います。特に、今後の日本では同業者受けを狙うことイコールニッチになりそうな気がするので、クリエイターを同業者受けするかどうかで考えるというのも面白い視点だなーと思いました。ここはちょっ今度掘り下げて考えてみたい視点です。
まとめ
GOETHE 2012年5月号の安藤忠雄と秋元康の対談を読んで感じたことをまとめてみました。ご意見、ご感想などもしあれば、Twitterやっているので、@gamellaに送っていただければ。