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スマートフォン戦争とは何だったのか

スマートフォンに関する総括的なエントリー。内容が俯瞰的で整理されており、非常にわかりやすかった。

http://asset3.cbsistatic.com/cnwk.1d/i/tim/2012/05/04/mobile-phone-market-profits.png
[注意] 上のグラフは「業界の企業が出している利益全体を、誰がどのように分け合っているのか」の図です。シェアではないのでご注意を。
上のグラフをベースに以下の総括をしている。

1. もはやスマートフォンだけが勝ち組であり、スマートフォンにうまく移行できなかった携帯電話の王者は全て負け組に
2. スマートフォンにおけるAndroid v.s. Appleの戦いは、Appleの勝ち
3. Android陣営の中で唯一利益を出しているのはSamsungだけ
4. 携帯電話業界において、旧来の携帯からスマートフォンに移行して利益を出し続けているのはSamsungだけ。ゲームのルールの変更にさっさと気がついて投資戦略や自社の体制を変えられたのが鍵。

AppleとSamsung

スマートフォン系のニュースを追っている人にも納得の内容だと思う。正直、AppleのiPhoneと同じかそれ以上のスペックのスマートフォンをリアルタイムに投下できている企業はもはやSamsungだけだ。たとえば、Samsungの次期主力機のGalaxy S3のスペックは1.4GHz Exynos 4 Quad (クアッドコア)を搭載し、メモリ1GB、LTE対応、1280×720ピクセルの4.8インチ Super AMOLED HDを搭載したスマートフォンという噂だが、恐らくこのスペックはiPhoneの次の世代の機器とほぼ同スペックだろう。もはや他のアンドロイド陣営は肝心のスペックでもAppleとSamsungに半年くらい遅れてしまうのが現状であり、幾つかの企業はすでに脱落している。
一時期はQualcommのチップセットを使えば誰でもアンドロイドのスマートフォンを出せると言われており、事実多くの日本企業もスマートフォンを出したが、結局は独自SoCを設計し、リスクを取って勝負した企業が最終的には物量で押し切った。つまり、スマートフォン戦争を振り返れば、ブランド力とプラットフォーム戦略で早期にポジションを築いたAppleがまず圧倒的な勝者となり、次点として市場動向を的確に読みSoCを独自に設計できるだけの開発投資を行い、的確に市場が臨むプロダクトを開発・リリースしたSamsungが残った、という結果となった。さて、こうなってくるとAppleやSamsungと同じだけの投資を行うことができる企業にならないとなかなか同じ勝負のステージに立つことが難しい。まだまだHTCやソニエリにはチャンスはあると思うが、だんだん「スマートフォン」というステージで勝負を行うことが難しくなっていくのは間違いないと思う。

ポスト・スマートフォン

さて、僕が気になったのは、上のエントリーにあった「ポスト・スマートフォン」という言葉。ガラケーからスマートフォンと同じような変化が、スマートフォンからポスト・スマートフォンにもあるというように見えるが、個人的にはスマートフォンから次へのデバイス的な形態の変化はほとんどないんじゃないかなーと思っている。
例えば、液晶テレビの最近のデザインを見てもらえばわかるのだが、液晶テレビは枠が薄くなり、液晶部分と本当に僅かな枠というデザインにほぼ全ての液晶テレビが落ち着いてしまっている。スマートフォンもデバイスとしては、これから薄く・軽く・バッテリーが持つというような要素的な変化はあると思うが、スマートフォンがいまの形態から激しく逸脱するような変化はおそらくおきない。
それよりも、スマートフォンと連携して動作するGoogleのARグラス、さまざまなバイタルセンサーなどが現れてスマートフォンのカバーする範囲がより現実に拡張されていく変化が起きてくるのではないかと思う。そして、この部分の肝となる新しいインターフェースもAppleはSiriのような形でしっかりと抑えているし、Appleの有意性は「ポスト・スマートフォン」であってもなかなか変わらないはず。
また、それよりも現在最も逼迫しているネットワークの部分からルールの変化がやってくるんじゃないかなー、と思っているが、キャリアとの付き合い含めてここはここで泥臭い部分なのでどのような勝負が繰り広げられるのかとても興味深い。