何度かAKB48とコンテンツの話をいままでブログでも取り上げてきたが、秋元康がここまできちんと語っているのは、あんまり見たことなかったコンテンツ論。非常におもしろい話だった。
いや、雑誌で安藤忠雄と対談していたり、今月のGQでもアストンマーチン乗ってみたり、いろいろ雑誌ではよく見かけるが、こういう直球のコンテンツ論を見る機会ってあんまりない気がする。AKB48好きの間では、常識なのかもしれませんが、個人的に上のまとめの中で面白かったものを書いてみる。
「人数が少なくとも、ある人にグッと刺さるものが必要。興味を集めさせることが大事で、100人のうち一人にしか刺さらないものを作ること、ある世代だけで大ヒットするものをつくること、それにより話題が他の世代に広がる」
以前にも書いたが、コンテンツの熱量をどのように維持するかというのが、コンテンツの消費スピードが早くなればなるほど、重要になってくる。そういう意味で、まず大事なのが数を打つことなのではないかと思う。この前の以下の対談で秋元康は常時100以上のプロジェクトを同時にこなしていると言っていた。同列では語れないが、多作で有名な安藤忠雄であっても並行して行うプロジェクトは50ということなので、その並列性はすごいと思う。
しかし、これは考えてみれば、それだけ量をこなしているということ。まず、ある程度の質をたくさんやって、どれがどこの層に刺さるかをきちんと一個一個検証していくプロセス。まず、これをしっかりやっているのを感じる。総選挙のような硬い仕事をしつつ、乃木坂46や全力坂のような誰に刺さるのかわからない仕事も大量にこなす。しかし、コンテンツを提供する側からみれば「多作は才能」なのだ。この部分を評価しないと秋元康の方法論はよくわからないと思う。ここまで書いて思ったが、結構アプローチはリーンスタートアップに似ている。
![]() | エリック・リース 日経BP社 2012-04-12 売り上げランキング : 232
|
「『みたことがある』というのが今後重要なコンテンツになる。」
「みたことがある」という価値がなぜ重要なコンテンツなのか。一つは歴史。日本人は特に歴史が大好きなのだが、総選挙のようなシステムは一年、一年でドラマが自動生成されるため、3年前の総選挙なんて言った日には、もうすでに大昔のことになる。
最近Google+のCMで物議を醸している前田敦子の「私のことは嫌いでもAKBのことは嫌いにならないでください!」という台詞も、これって「巨人軍は永遠に不滅です」というのと文脈的には同じですよね。つまり、歴史の生成を行なっているところなんです。積み重ねというのはコンテンツの熱量と密接な関係があり、そのうち歴史自体がコンテンツとなってぐるぐると回り出す。そうなってくると、いよいよ競争から戦争的な文脈に、好き嫌いから宗教的な文脈に争いのステージが変わってくる。そういうことを狙っているのだと思う。
「ウケるコンテンツになるには摩擦があることが重要。無理があること、反対があること。議論になること。」
そして、最後にこれ。この摩擦があるというのは、最初の量をこなすということとセットに考えるべきでしょう。今はどんなコンテンツが刺さるか、もうコンテンツを投下してみるまでわからかない。だから、ある程度の質を保ちつつ、もっとも摩擦がありそうなところに投げてみて、その反応から次の動きを決める。JKT48(ジャカルタ48)などの如何にも摩擦がありそうなことをサクッとやってみて、SDN48のように反応が悪ければサクッと辞める。そういう動きとセットでこの摩擦を考えてみると、コンテンツの仕掛け方が見えてくる気がする。
まとめ
そういうわけで、秋元康が語るAKB48のコンテンツ論で気になったものをピックアップしてみた。個人的には多作、摩擦、歴史的文脈というのがポイントなのかなー、とおもう。最近のスタートアップの手法ともカブる部分があり面白かった。