昔、オバマの作り方という本があり、内容はいまいちな点も多かったのだが、2008年のオバマ選挙を日本語で総括できるレアな本であり、ソーシャルの活用という点でもなかなか興味深い事例が多かった。
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オバマ陣営を見ながら感じたことを書いてみる。
- ニュースメディア部門の目的が組織化担当として、最終的な投票行動まで結びつけることを目的としている。2008年の選挙では、ソーシャルメディアの活用はスケールする呼びかけやABテストのような効果最適化が焦点(当時はそれでも十分に画期的だった)だったが、今回はビデオ・デザイン・インターネットの各部門のしごとを最終的にチーフデジタルストラテジストと構造化担当が責任をもって投票行動まで結びつける構成になっているように見える。
- つまり、これはニュース・メディアの効果が「個人単位」まで計測可能になったということで、まさにビッグデータ界隈の4年間の研究成果の集大成でしょう。
- 2008年のスタッフがそのまま政権での仕事を手にして、次回の選挙に参加しているところに組織としての強さを感じる。当たり前かもしれないが、4年後も一緒に戦ってくれるというのは地味にすごいことだと思う。
- IT部門の開発チームがベンチャー出身でDevOps、UX担当がきまっており、おそらく開発手法もアジャイルで極めて柔軟なものであることが予想できる。選挙のような状況が刻一刻と変わる活動とベンチャー系の開発ワークフローの親和性が高いのは当然といったら当然か。
- データ分析責任者(Chief Analytics Officer)が29歳と非常にわかく、また分析の面々も非常にアカデミック色が強い。これは、一つはビッグデータ界隈への投資で若い人材にも非常に経験豊富な面々が多いという理由もあると思うが、メンバーが若いのは開発チームのアジャイルな手法との親和性だと思う。分析してもそれを開発チームが活用できなければ意味がないが、データ分析の面々も一度はアジャイルなフットワークの軽い開発を経験している方がよい。
- 全体的にリーンスタートアップで提唱されている手法との親和性を感じる。やはり、ひとつの問題解決という手法にとって、このようなチーム構成と開発体制が必要不可欠ということか。
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