2012年の振り返りエントリーをちらほら読んでますが、振り返るほど今年は映画も漫画もその他のコンテンツも視聴してないので、ちょっと趣向を変えて手短にいた兄なども捕まえて次の10年をディスカッションしてみました。ちょうどshi3zさんが同じようなエントリーを書いていたので、だいぶかぶったテーマも出てきますが、まぁ、普通にコンピュータの流れを追っていたらみんな同じテーマをチェックしていると思うので、お付き合いください。
コンピュータ以外のトピックも混ぜてみましたが、最近の未来予測本といえば、これですね。
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未来の遺伝子診断や各種マーカーの進化にどのように付き合うか
個人的にはこれが一番の実生活のビッグトピックになると思っているのですが、最近血液に含まれる特定のマーカーとなる物質を調べることで、いろいろな疾病リスクや遺伝病リスクなどを調べることが可能になっています。最近だと子供のダウン症などのリスクを計測するマーカーが話題になっていました。
今後も政府や特定組織がこのマーカーは利用して良いとか、この診断は行なって良いとかそれぞれ結論を出す必要がでてくるでしょう。ただ、この分野の進化は凄まじいので、たぶん10年後にはやろうと思えば、自分の予想生存年齢を算出したり、子供の予想IQなどが計測できるようになってくると思います。たとえば、自分がおそらく63歳で死ぬとか、そういう情報が分かってしまうことに対して我々はどのように向き合えばよいのか、このあたりに関しては個人というものの概念をどのように定義するかが強く関係してきます。それはキリスト教的世界観とイスラム的な世界観で大きく変わってくると思いますし、日本でも中国でも大きく違うでしょう。各国家がそれぞれある診断やマーカーに対して異なるポリシーを決めた時、そのポリシーが結果的に長期的に民族の衰退を招いたり、その国の有り様を変えてしまうようなことになってくると思います。SFっぽい話ですが、これはすでにほぼ間違いなく発生する問題であると考えていいと思います。
MRAMと1000のオーダーのコアを持ったARMサーバが登場する
MRAMというのは磁気抵抗メモリのことで、次世代メモリの本命と考えられています。MRAMの特徴はなんといってもメモリの内容が永続化され、PCの電源落としてもメモリが残るという点です。
MRAMの活用としては、MRAMとSSDを組み合わせて、SSDを大容量ハードディスク、MRAMを書き込み用のキャッシュとすることで、現在のPCで一番大きなボトルネックとなるファイルIO処理を実際にアプリケーションの実装次第では、ほとんどメモリと同速度にまで早めることが期待されています。これにより、mallocのようなメモリ確保の処理と、ファイルのオープン・書き込み処理が同じオンメモリ処理となることで、プログラムのパラダイム自体が変わります。ここにさらに関わってくるのが、AMDなどが2014年に投入すると言われている64bit版ARMを活用した大量のCPUコアを搭載した高性能ARMサーバです。もともと複数個のコアの最大のボトルネックは複数コアからの同時アクセスを問題なく整合性を保ちさばくメモリコントローラの実装部分ですが、MRAM+SSDのアプローチはファイルIO速度を実質メモリと同等とすることでその問題を一部解決する可能性があります。このような局面で言語仕様自体に並列処理が組み込まれたgo言語のようなプログラミング言語や、Hadoopのような並列処理プラットフォームがその真価を発揮してくるのではないかと思います。
GoogleグラスのようなARが一般に普及に貢献するコンテンツは登場しないが、特定分野で強力なインターフェースとなる
ARの普及は技術というより、そこに魅力的なコンテンツを掲載する枠組みを作ることができるかどうかが最大の課題です。ニコニコ動画やTwitter、Facebookを見ていても僕らが一般に消費している最大のコンテンツというのはインターネットスペースのユーザとユーザとの接点から生じるコンテンツで、それは実世界の場所にはあまり依存していないため、ARに描画するコンテンツが急速に増えるということはないと思います。この分野はむしろ7インチタブレットが本命感あります。では、GoogleグラスとARが本当に真価を発揮する分野はどこかというと遠隔地との会議や会話、教育などの分野ではないかと思います。例えばある会場を第X世代Kinectでリアルタイムトラッキングしながら、搭載されたアレイマイクでだれの発言かを認識し、遠隔地にいる人の第X世代Googleグラスににあたかもその人が会場にいるかのように描画することで、真の場所に依存しないコミュニケーションを実現する。たぶんあと10年以内にはこのシステムが一般化して、特定分野で強力なインターフェースになると思います。ただ、いってしまえばその程度で終わると思います。
7インチタブレットが普及しきった未来
もろもろの事情でスマートフォンがパソコンを置きかえるのは無理だと思ってましたが、7インチタブレットはパソコンを置きかえるとおもいます。というか、何かしらの創作活動を行わなければ、もう必要ないですよね、パソコン。iPad miniの体験はそれくらいインパクトありました。このあたりの詳しい話は以下のエントリーに書きましたが、ではこの7インチタブレットが普及した未来に何があるかだけ簡単に考えてみると、たぶんAndroid有利のような気がします。それは、今のiPad miniの有利な部分って、1000円以上の知育アプリがあったりして、アプリ市場の裾野が非常に広い部分なのですが、それって、いわばiPad向けじゃないとコンテンツを作る手間とその利益が吊り合わないからiPad有利なわけです。
ただ、将来7インチタブレットに搭載されるCPUのシングルスレッド性能が順調に伸びて、今のノートパソコン程度になったらいよいよHTML5コンテンツが使い物になってくるので、そのあたりで独自プラットフォーム上のコンテンツの強みが弱体化していきます。それよりもAndroidの入力システムをカスタマイズできたりするOSのかなし下の部分もカスタマイズできる点がパーソナルという点で競争力を発揮してくれるのかなーと。とりあえず、iOSとAndroidの競争はユーザーからしたら大きな利益を得ている部分なので、まだまだ続いて欲しいところです。
英語文化圏に敷かれる巨大な教育のレーン
まぁ、これはほぼ確実ですが、今以上に巨大な高等教育のレーンが英語文化圏に敷かれます。iTunesUとか見ていてもそれは一目瞭然です。この巨大なレーンに負けないレーンを日本語文化圏もきちんと引くことが出来るかが、この10年で本当に国家の行く末を決めると思います。このあたりの戦略を引いている人がどの分野の人なのか非常に謎なのですが、個人的な感覚としては、国家がきちんとお金を出すことで産業が育成される分野って教育が一番親和性高いと思うんですよね。それは、教育は国家が主導したら小学校、中学校、高校という各個人が一番時間を過ごす場所に浸透させることができるので。これは民間だとなかなか難しいでしょう。というわけで、英語文化圏に敷かれる巨大な教育のレーンに対する態度、たとえば自分の息子をそこにどのようにのせるか、またはのせないのかが大きなトピックになってくると思います。
TwitterのNPO化とFacebookのさらなる帝国化
ソーシャル分野に関しては、Twitterに関して言えばもうNPO化してしまってWikipediaと同じようなものにしてしまうのがいいんじゃないかと勝手に考えています。というのも、Twitterほど民主的なシステム(ユーザの立場やハッシュタグの仕様などなど)ってなかなかないと思うのですが、APIの仕様変更や広告ツイートなどお金に絡む変更をするたびにユーザーからてひどい非難を浴びています。なんかもうTwitterってNPO化してしまったほうがおもしろいんじゃないかと持っているのですが、まぁ、ここまで大きくなるのに大量のファンドのマネーが投入されているのでは、実際それはないですよね。Facebookはたぶんますます帝国化して、みんなどんびきするようなサービスが次々に登場し、そのうちあれこんなところにデータ預け続けていいんだっけという空気になってくると思います。その時に、どのような流れになるのかはちょっと読めませんが、ここでまさかまさかのGoogle+が登場したりしたらおもしろいな、とおもいます。