内田樹は各論ではいいこともいうのだが、マクロで見ると恐ろしいことをいうことが多く、このエントリーもどちらかというとそのタイプ。
まず、内田樹が前提としてグローバル経済を真っ向から否定しており、みんな貧しくなってもよいから、より精神的な豊かさをローカルな人間関係も求めようという立場であることは明確なので、そこについて何かしら言うつもりはない。いろんな意見があっていいと思うし、グローバルとローカルのそれぞれの話題をそれぞれ得意な人が解決することで、よりよい社会を目指すことができると思うので。ただ、なぜかこのひとはグローバル側を意味なく、ディスるしそのためには陰謀論も駆使する。
今、大学生が多すぎる、大学数を減らせという話が出ていますが、低学歴・低学力の若者たちを作り出していったいどうするのかと言うと、低賃金の労働力がほしいからです。
たしかに国内の人件費を中国やインドネシアなみにまで切り下げられれば企業は海外に生産拠点を移す必要がなくなる。国際競争に勝つためには日本の労働者の賃金を下げるというのがいちばん簡単なんです。すでに低賃金化は深刻になっています。
先日ゼミの卒業生が僕のところに相談に来たんですが、ある生命保険会社の正社員なのに、手取りが10万円台半ば。営業用のDMの切手代もバレンタインのチョコ代も自分持ち。それどころかデスクのパソコンのリース料2万5千円も月給から天引きされていました。営業成績は同期でトップなのに、二年目の夏のボーナスが7万円。あまりに気の毒なので、転職を勧めました。
この部分はさすがにロジックがおかしいってすぐにわかるでしょ。
すでにこの世界からまっとうな賃金を貰える仕事の数自体が減っているんです。ちょっと古いデータですが、2010年時点の25歳以下の若年者の失業率は健闘しているドイツで10.4%、フランスは24.5%、米国は18.1%、スペインでは42.9%ですから、もうこれは世界的に先進国の傾向として仕事がないわけです。この傾向は日本も同じで、日本の2011年の若年失業率は8.2%ですが、この数字も拡大し続けている。需要と供給の関係で、雇う側は大卒だろうが高卒だろうが、買い叩ける状況が続いているわけで、こんな状況なら大学生でも低賃金で雇うことできるわけで、論点はそこではないですよね。
重要なのは、自分が買い叩かれないようにきちんとした能力を保持するには、それなりの企業での実務経験を積むのが一番てっとり早いわけで、あとはそこからその実務経験と実力を活かしてどのようにキャリアをつくるかの勝負なわけです。なので、入り口のところではどんなに辛くても就活するのが必要なわけで、現状の就職活動もそういう枠組みで解決策を模索するのが正しい。つまり、「きちんとした実力がつく実務経験を積むこと」を就職活動と切り離して提供できるかが鍵ですね。この部分はすでに多様な解決策が提示されているので、あとは既存の就職活動という枠組みから飛び出す勇気をもてるかどうかですが、以下の記事を読む限り、日本でも大企業が何個か潰れれば、考え方も変わってくるのかな、と思っています。