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2年経って改めて読みなおして感じたこと - 「小さなチーム、大きな仕事 完全版」書評

REWORKというタイトルでアメリカでも話題になっていた本「小さなチーム、大きな仕事 完全版」。じつはこの本の2年くらい前に「小さなチーム、大きな仕事」という文庫がすでに発売されていて、そこにテキスト+イラストを足したのが本書。なので、昔文庫でこの本読んでいた人は特に読みなおす必要はないと思う。ほとんどエッセンスは変わってないです。

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン 黒沢 健二

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では、なぜ読みなおしたかというと、2年くらいまえにこの本を読んだ時に感銘を受けた記憶があって、2年経った今読み直してみてどう思うかを改めて感じてみたかったから。知っている人は知っていると思うけど、この本は37シグナルズという、basecampというプロジェクトベースのイシュートラッカーなどを開発しているチームの実体験に基づいた本で、この本の作者の一人・デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン(DHH)はRuby on Railsというおそらく世界で最も有名なWebフレームワークを作った・今も開発している人でもある。
まず簡単にこの本の内容について語っておくと、会社を大きく、仕事を大きく、人を増やさくても、シンプルでユーザー指向な方向にフォーカスすることで、良いビジネスができるよ、っていう本。特に人は失敗から学べるものなどなにもない、成功しか人を成長させる方法はない、という部分やエラーメッセージも含めて全てマーケティングなんだ、というような今のスタートアップ論の先駆けとなるような本だったと思う。
さて、2年経って改めて読みなおして改めて感じるのは、この本に書かれた様々な概念がリーン・スタートアップなどの方法論としてこの数年で結実しているのだということ。リーン・スタートアップというのは、近年のスタートアップ論の中では最も話題になったものの一つで、例えば「小さなチーム、大きな仕事 完全版」に書かれている「たくさんの機能を詰め込んだ中途半端な製品をつくりより、よくできた半分のシンプルな製品を作って公開しよう」という考え方はminimum viable productという考え方に昇華されているし、大きなTODOリストを昇華してヒーローになるより、小さな勝利、小さな改善を積み重ねてプロダクトを改良しようという考え方はリーンスタートアップでは「強力なデプロイメントシステム」と「定量的な評価を可能にするテスト手法」として誰にでも利用可能な方法論に昇華されている。そういう意味でこの本に記載された概念が現実世界にどのように落とし込まれたか、という観点から考えると面白い。
リーン・スタートアップ  ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだすリーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
エリック・リース 伊藤 穣一(MITメディアラボ所長)

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もちろんまだまだ現実世界にきていない概念もある。例えば、会社の文化の作り方や人の雇い方に関しては、いろんな考え方があると思うが、結局人ベースで方法論はなかなか生まれないし、競合相手やプロモーションの仕方に関しても方法論として適用するにはまだまだ脆弱なままだ。ただ、言えるのは、「小さなチーム、大きな仕事 完全版」に書かれていたことは間違いなく当時の先端であったし、それがこの2年間できちんと形になった。であれば、まだまだ原著としてこの本から学べること、感じることもあるのではないかな、と思う。