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KindleとSFは相性良いと思った:書評「Gene Mapper -full build-」藤井 太洋

最近、Kindleにハヤカワ文庫あたりから大量のSFの名著が発売されはじめている。そんな中、ちょっとした時間ができたので、スマートフォンで書いてそれを電子書籍で出版したことでも話題になっていた藤井太洋氏の「Gene Mapper -full build-」を読んでみた。

Gene Mapper -full build-Gene Mapper -full build-
藤井 太洋

早川書房 2013-04-25
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大学で専門だったこともあり、この手の遺伝子系のSFはおかしな点があると、個人的にはもやっとしてしまうことが多いのだが、Gene Mapperはかなり知見としても最新のものをベースにしており、よくかけているように感じた。とはいえそのような部分がゼロというわけではなく、例えば遺伝子設計技術者は遺伝子操作をgXMLというXML形式で記述して行うそうなのだが、XMLのデータ構造で遺伝子みたいにタンパク質まで発現しなければ事象として何が起きるかわからないものを記述しようとしたら、それは複雑な階層構造かつグラフ構造を持つはずなのでかなり大変そうだな、と思った。たぶん、実際にはクエリ式のような条件文を書いていたので、バックエンドに遺伝子DBのようなライブラリを持っており、それを組み合わせて遺伝子操作を行うためのラッパー言語のようなものなのかな、と想像した。遺伝子操作を行ったもののデバッグビルドにSDKがまるごとついてきているという話があって、デバッグビルドには本来はストリップされる遺伝子操作の高度な関数やクエリ式がストリッピングされないままついてきたのかなー、とか、まぁ、そういうどうでもよいことをいろいろ考えながら読んでいた。最後のネタなどは、ちょっと突っ込みたいところはあったが、それはネタバレを伴うのでここでは書かない。ただ、全体としてはなかなかうまくまとめているのは間違いなく、読み物としても面白い。
遺伝子系の研究は、医療分野や食品分野とかだと、これ以上の研究をするには倫理観の問題にある程度踏み込まないといけないという壁が多く、例えば卵細胞ベースのクローン系の研究が行き詰まったなかで、IPS細胞という体細胞ベースのキリスト教的倫理観から考えても問題がない技術がいきなり現れたりする。そんなブレイクスルーがありえるくらいなのだから、まぁ、確かに25年くらいたったら、このくらいのブレイクスルーは実現されているかもな、と思う。
最後にKindleとSFは相性が良いと思った。というのも、SFは分野としては面白いけど、そもそも実生活で接点が少ないので、なかなか本屋とかで手に取る機会もすくない。また、やたら堅苦しい表紙を付けるのがなぜか大好きなので、ますます手に取りにくくなっている。あれは本当にやめたほうがよい。でも、KindleならAmazonがズバッとおもしろそうなものをオススメしてくれるし、レビューなどで評価もわかりやすい、表紙の圧迫感も少なめなので、普通に買いやすくなっている。これからもちょくちょくKindleでおすすめSFを買って行きたい。とりあえず、最近読んだ本だとニコニコ動画を元ネタに宇宙モノを書いた南極点のピアピア動画はなかなかおもしろかった。
南極点のピアピア動画南極点のピアピア動画
野尻 抱介

早川書房 2013-01-25
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