TEDのシェリル・サンドバーグの動画を見ていて興味を持っていたのだが、リーンインが日本でも発売されていたので読んでみた。
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シェリル・サンドバーグ
僕はこのトピックは特に日本では構造的な問題だと認識している。男性には、俺はキチンと金を稼いでくるので、家のことは奥さんに任せるというメンタリティの男性が特に一昔前は多かったと思う。さらに男性が優秀であればあるほど、このメンタリティは顕著になるので、だいたいの場合、構造的に優秀な旦那と一緒になればなるほど、奥さんはキャリアを辞めるケースが多い。さらに言ってしまえば、男性は家庭を顧みず仕事に没頭すればするほど出世する職種(一般的にハードワークが美徳とされている職種)の場合、旦那に家庭の資源を一点集中して出世してもらうというのはかなり経済的にも合理性がある。このような点をもろもろ含めて、この問題は構造的に解決しづらい特性があるのだと考えている。
構造的な問題を個人のメンタリティで解決しようとするのははっきり言ってしまえば筋が悪い。このようなケースの解決策としては、政府のような機関が逆方向のインセンティブを与えるというのが一般的だ。この場合のインセンティブとは、もっとも育児が、体力的にも家計的にも、辛い幼児保育を充実させることなのだが、どうも日本では育児休暇を三年にしようとというようなまず続けるのが最優先のキャリア的にみたら最悪と思われるアプローチが採用されようとしている。まあ、つまり日本ではこのトピックを根本的に解決しようという気があまりないのだと思う。
さて、リーンインの話に戻ろう。僕は将来的にこのリーンインに記載されている事項は一種の「生存戦略」になると思っている。つまり、奥さんのキャリアを途切れさせず、旦那のキャリアも失速させずに、如何に家庭内のリソースの最適化を行なって、収入や自由時間の総和を稼ぐか、というテーマとして帰結させて考えるのが筋が良い考え方だと思っている。つまり、従来の旦那にリソースを一点集中させて突破を図るケースは、ざっと考えても長期的に見て以下の様な欠点がある。
- 旦那のキャリアが詰まった時の代替手段が極めて手薄となる
- 経済成長が止まった環境では、そもそも上にいける人数が限られてくるので、実際に稼ぎを良くするためにはある程度の成長産業に転職するなどのリスクを取る必要がある。しかし、肝心のリスクを家庭の稼ぎが旦那に依存してしまうと取りづらい。
- 仮に奥さんの方が優秀だった場合に、本当はもっと最適化できた家庭のリソースを無駄にしていることになる。
つまり、過去においては極めて有効だった旦那のキャリア一点突破手法が、それが有効と思われるケースが日本ではより少なくなっており、逆にリーンインに記載された戦略こそが家庭内リソース最適化の観点から最も優れた生存戦略になってくるということだ。そんなわけで、子育て前の家庭とかそういう人たちが一種の生存戦略として読むというのが最も優れたターゲッティングなのではないかと思った。そういうトピックに興味あるならかなりおすすめです。