Future Insightを独自ドメインで運用はじめましたが、これを機会に積極的に寄稿なども扱っていこうと考えています。今回は友達のDSさんに「WhatsAppはなぜ欧米で成功したのか(なぜ日本では成功していないのか)」というホットなテーマで寄稿いただきました。
WhatsAppはなぜ欧米で成功したのか(なぜ日本では成功していないのか)
FacebookによるWhatsAppの買収が話題になっています。金額もさることながら、ここ数年盛り上がっている「ウェブ VS ネイティブ」「パソコン VS モバイル」の文脈でも語ることができるトピックなので、特に関心が高いようです。
ただWhatsAppが日本ではそこまで普及していないために「なんでWhatsAppが流行ったのかわからない」という人も多いようなので、私の考えをまとめたいと思います。
WhtatsAppの成功を考えるときに、面白いポイントは「有料アプリだった」ということです。有料アプリはご存知の通り、無料アプリに対してダウンロード数でどうしても劣ります。iOSならまだマシで、Androidではどうにもなりません。それが一般的なアプリディベロッパーの感覚だと思います。では、なぜ有料アプリだったWhatsAppが欧米で普及したのか。その大きな要因は「ネイティブアプリの使い勝手の良さ」や「マーケティングの成功」ではなく「携帯電話料金の問題」だったと考えています。
WhtatsAppやLINEのようなメッセージングアプリが何の代替となったのかと考えると「Eメール」が一番はじめに想起されると思うのですが、「電話番号だけでメッセージが送れる」ということから考えると、より近いのは「SMS(テキストメッセージ)」であることがわかります。
日本では、SMSは同じキャリア内だと送受信無料、キャリアをまたいだSMSの送信には1通ごとに送信料がかかりますが受信は無料です。ただ、そもそも日本では、2011年までキャリアをまたいだSMSの利用が出来なかったこと、またiモードにより携帯電話端末でのEメール利用がかなり早く普及したことから、SMSがコミニケーションツールとして浸透しませんでした。日本の多くの人はSMSを相手のEメールアドレスを知らなかった時の代替手段として利用していると思います。
欧米では、日本とまったく逆の
- キャリアをまたいだSMSの利用が早くから可能だった
- 携帯端末でのEメールアドレスへの対応が遅れた(iモードはやっぱすごい)
という2つの条件がかさなったことにより、EメールではなくSMSが通常のコミニケーションとして普及しました。欧米ではSMSの送信ごとに料金がかかり、さらに受信にも料金がかかるという料金体系が設定されていたため、携帯キャリアにとって「美味しい」ビジネスになりました。携帯キャリアは「SMS使い放題」プラン(月10〜20ドルくらい)を用意し、SMSを使いたいユーザーはそれに入ることを選択していました。
そこに登場したのがWhatsAppで、有料アプリで最初にお金はかかるもののごくごく少額(1ドルだったはず)で、SMSが無料で使い放題(通信にはパケット費用がかかるが送受信は無料)というサービスを提示し、爆発的に普及しました。SMSのために毎月10〜20ドル払うより1ドルの有料アプリを買ったほうが安いという実に経済合理的な選択の結果です。
WhatsAppは「アプリに広告を出さない」という選択をしたので有料アプリでサービスを出すしかなかったのだと思いますが、結果として、有料サービス=「品質が高い」「信頼できる」という消費者側のバイアスも普及にうまく機能したと思います
現状、有料アプリであったことはWhatsAppにとって大きなメリットになっていると考えられます。利用者にとっては無料アプリより有料アプリのほうがスイッチングコストが高く、他サービスにとっての参入障壁になっているからです。ただ、現在、WhatsAppは競合に対抗するためアプリを無料で提供しており(2年目からは利用に0.99ドルかかる)、新規獲得ユーザーの継続率はどうなのか、また今回のFacebookによる買収で利用料金含めてどうなっていくのか注目したいところです。