日経コンピュータの2014.4.17号が量子コンピュータ特集だったのですが、この出来が抜群でした。
メイントピックはGoogle/NASAが購入した量子コンピュータ「D-Wave」について。これって、何なのと思いつつも、しっかり調べていなかったのですが、この一冊でだいぶ情報を補充できました。
簡単にいうと、「D-Wave」というのは、これまで考えられていた量子ゲート式の量子コンピュータではなく、量子ビットを用いて量子アニーリングのみを効率的に行うための実験装置で、コンピュータですらない。原理としては、簡単に言うと、量子アニーリングを行うためだけの装置が存在し、通常のコンピュータでどのような組み合わせ最適化問題を解くかをセットアップして、その量子アニーリングによる実験を1000回程度繰り返し、通常のコンピュータなら計算量的に解くことのできない「組合せ最適化問題」のみを解くことができる、というものです。
量子アニーリングに関しては、擬似焼きなまし法(シミュレーテッドアニーリング)を知っている人なら、なんとなく理解できる方法だと思うけど、量子コンピュータの話にありがちな全然直感的にわからない話なので、Wikipediaのリンクも貼っておきます。
雑誌などの表を参考に、これまでの量子コンピュータとの違いをまとめると以下の通りかと。
違いのポイント | D-Waveなどの量子アニーリング式の量子コンピュータ | 従来の量子ゲート式量子コンピュータ |
---|---|---|
コンピュータなのか | コンピュータでははない、一種の実験装置 | チューリングマシンである |
実行できるアルゴリズムは何か | 量子アニーリングのみ | 開発すればどんなアルゴリズムでも実行できる。ただし、開発が難しい |
用途 | 組み合わせ最適化問題を解く | アルゴリズム次第でなんでもとけるが、現状は「因数分解」のアルゴリズムの開発程度しか行われていない |
実現性 | すでにD-Waveで商用化、高機能化の目処も立っている | 不明だが21世紀後半くらい |
上記をみるとわかるけど、要は実現が難しいと考えられていた従来の量子コンピュータではなく、組合せ最適化問題を解くという用途に特化して、現時点でできるものを作り上げたという意味で、テクノロジーの方向性としてはかなり筋が良いように感じます。
Googleのベンチマークでは、D-Waveを利用した場合、PCアーキテクチャに比べて35500倍高速に組合せ最適化問題が解けた事例が見つかっており、また、現状は量子ビットが512スピン(2の512乗ののスピン配列の組み合わせを解くことができる)ですが、日本でもすでに5000スピン(2の5000乗ののスピン配列の組み合わせを解くことができる)を目指した研究がスタートしているということで、現状研究が加熱しています。
ずっと未来の話だと思っていた、量子コンピュータがまさか現代でその一部でも活用が開始されているのをみると、おもしろいなー、と思います。