さて、小林弘人の新刊「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」がKindleで37%Offだったのでさくっと購入し、読み終わった。
時間と空間を超えてつながる新しい人間関係のもとで、ハイパー資本主義以前にみられた贈与経済を彷彿させる「シェアリング・サービス」が勃興している。さらに「社会がウェブをコピーする」なかで、絶対に安泰と思われていた事業が思いもよらない競合に浸食され、組織づくり、イノベーションの作法、教育までもが根本から変化している。はたして「昨日の常識が通じない時代」に私たちが身につけるべき「視座」とは何か。人間はウェブの力を味方にできるのか……。フェイスブックの歴史的意味からウェアラブルコンピュータによるパラダイムシフト、日本企業が行き詰ったほんとうの理由、そうした混沌の先にある未来までをも一つの線上で論じきった、渾身の一作。
ここ最近のインターネットやテクノロジーのトレンドとそれに対してどのような態度を取るべきかをまとめた小林弘人の最新刊だ。
新書としては、まちがいなく良い本だ。後半部に論考が浅いというか、現象だけざっと駆け足で説明したようなところがあるが、総じてこの本に書かれたことのプラスマイナス20%程度のことが実際にインターネットやテクノロジーの変化として起きているし、現象としても今後加速していくと思う。その上で、筆者は最終章で以下のような態度を取ることをおすすめしている。
- 失敗をしよう。失敗を許そう
- 新しい「希少」を探せ
- 違うもの同士をくっつけろ
- 検索できないものをみつけよう
- 素敵に周りの人の力を借りよう
- アイデアはバージョンアップさせよう
- ウェブのリアリティを獲得しよう
上のリストを見てもらえばわかるが、この本のおもしろいところは、「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」ということデータをまとめてを証明するということはあまりしておらず、「ウェブとはすなわち現実世界の未来図でああるのだがら、それを利用する最善の方法はこれだ」という、「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」を一つの事実として扱い、そこからどのような行動や態度をとれば「おもしろくなっていくか」というのをまとめた点にある。
そして、上記のようなまとめ方をしたところに、この本から何かを学ぶというのはつまり自分のこれまでの経験を筆者の視点から見つめなおし、再確認する一種の鏡のような役割を持った本のように感じた。
逆にこれまであまりテクノロジーに関する経験や知識がない人は、この本読んでどのように感じるのだろう。というのも、テクノロジーは明らかに人の行動に影響を与え始めており、テクノロジーに自覚的であればあるほど、例えばFacebookやTwitterでLineのアーキテクチャが自分の目に見える情報を定義していることがわかってくる。この自分の目に見える情報というのはすなわちインプットであり、人間の行動は多かれ少なかれインプットに対して、どのように反応するかは生物学的・脳神経学的に決まっているのだから、情報のアーキテクチャを決めることは個人の行動を定義することになる。
その個人の行動の変化を定義することが現在の「ビッグデータ」の最も重要なポイントであり、さまざまなプラットフォームが個人データの収集合戦になっているのは、そういう理由からだ。数億人の人がひとつの情報のアーキテクチャによって、行動が少しずつ変化され、最終的にそれが収益に結びついて構造が現在のWebプラットフォームの収益構造となる。小林弘人が述べた「ウェブとはすなわち現実世界の未来図である」の未来図とは、この構造を指しており、その構造に対してどのくらい自覚的になるか、またそれを利用し、フレームから外れるか、またはこの構造を利用して、どのようにうまく生きていくかを述べているとも考えることができる。
そんな風に僕は読み取ったわけだが、おそらく他の人はそうではないだろうし、たぶん普段考えていることと勝手に本の内容をつなげてしまって、そのように読み取ってしまったという側面もあると思う。この本読んでどのように読み取るかというのは、ものすごく多様性ありそうだし、そんな訳で、この本はなかなかおもしろい本だと思う。