以下のブログでおもしろい一節があった。
このことに加えて、SnapChatやWhatsAppの価値計算は、投資銀行の算定レポートでも行えるようなものではなく、ザッカーバーグ氏などの意志決定者の頭の中にしか結論がないケースも増えてきたのだと。旧来の買収におけるシナジー効果などは、シリコンバレーにおける買収のロジックとは無関係となりつつあり、専門的な分析や提案能力すらも、西海岸の企業としては否定される価値なのだと述べています。
簡単に言うと、決算の結果よりもFacebook/Google/Amazonなどの成長戦略にのっているかどうか、成長戦略にのっていなくても「インスピレーションにのっているか、どうか」が企業価値の指標になっているという話。もちろん、一部の例外的な話ではあるが、それで西海岸では大量の億万長者が生まれているのも事実で、このまえサンフランシスコに行った時もWhatsAppの買収が結構大きな話題になっていた。
ちょっとここでIT業界のいわゆるビッグププレイヤーの現状をおさらいしてみたい。こまかいことを言うといろいろあるが、だいたい以下の様な感じなのではないかと思う。
ビッグプレイヤー | 意思決定者 | 主な収益源 | 抑えているもの |
---|---|---|---|
創始者 | 検索・Webページ内のディスプレイ広告 | 検索、スマートフォン市場、GmailやYouTubeなどのNo.1サービス | |
創始者 | Feed内の広告 | ソーシャルなネットワーク情報、個人の属性情報による的確な広告配信 | |
Amazon | 創始者 | 小売・電子書籍・クラウド環境 | 小売ネットワーク・強固な決済ネットワーク・電子書籍市場 |
Apple | CEO+取締役 | デバイス | ノートパソコン・スマートフォン市場、アプリプラットフォーム |
もちろんビッグプレイヤーといえば、IBMとMSも入っているが、この二社は成熟市場をすでに相手にしているので買収という観点ではいったん抜いた。ただ、MSの最近の動きを見ていると、結構おもしろいので、じつはそろそろ上の表にもどすことになるのではないか、という気もする。こうやって並べてみた上で雑感を。
こうやってみると、Appleのポジションがかなり成熟してきている。もともとジョブズがCEOだったころも買収はピンポイントで必要な技術を手に入れるために行っていたが、現状はその意思決定者が創始者ではなくなったことで、ますます傾向としては利益確保の方向性に向かうと思う。そう考えるとIBMとの提携も非常に納得できる。
Google、Facebook、Amazonの強みは結構似ていると感じた。圧倒的なアカウント数とそれを利用したユーザーの行動の確保。そう考えると、FacebookとGoogleが行っている広告メインのビジネスにAmazonが参入してくることはむしろ必然。ただ、広告に参入するにはニュースフィードも検索もないAmazonはインプレッションが足りないので、Twitchの買収は非常に的確な第一歩だと思う。
Googleの収益基盤の盤石性を考えると、すでにステージとしてはIBM/MSと同程度のポジションにいる(つまり利益追求ステージにいる)のではないかと思う。ただ、それを感じさせないアグレッシブな開発体制と買収スタイルはひとえに創始者の方向性の賜物か。ここまで世界に影響力を与える企業の意思決定が、優先株を持つ2人でおこなわれていることを考えると、大企業化を創始者の力で成長曲線を保っているという、おもしろい局面にいると思う。
Facebookの買収といえば、Instagram、WhatsApp、Oculus Riftだが、Oculus Riftは難しいとしてはも、最初の2つがFacebookに統合されていく様子があまりない。これは以前も書いたが、SNSは各年齢のステージによって利用するものがことなってくるので、下手に統合するよりもSNS・その関連事業としてFacebookの競合になる得る可能性のあるものを早めに買収して、Facebookの盤石なデータセンター基盤を提供し、一緒に成長していくことを選択しているのだと思う。WhatsAppはあっさりMessengerに統合される気もするけど。そういう意味では、InstagramのFacebookのデータセンターに移動したときの話が面白かった。
これら企業の話だと、以下の本が現状だとオススメ。特にGoogleの本(In the plex)はもっと評価されて良いと思う。