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スマートフォン市場の変貌とSamsungの憂鬱

以下のSamsungの決算をみて、衰退期に入るスマートフォン市場でOS/エコシステムを抱えない企業の憂鬱について考えた。

詳しくは上の記事を読んで欲しいが、Samsungのは営業利益が四半期ごとに1兆-2兆ウォンのペースで減少している。以下の図がわかりやすい。

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Samsungのスマートフォン自体のシェアはそれほど顕著に低下していないのだが、営業利益はピークの半分以下になっている。これは、プロダクトの衰退期によくみる現象で各社の差別要素がなくなっている中で、生産能力自体はピークに併せて作られているので、値段を落とさないと競争力が維持できず、結果的に利益が減少するという状況だ。

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利益の70%以上を占めるスマートフォン事業の市場変化には、あのSamsungでは対応が難しく、また、Xiomiなどのはるかに安価なスマートフォンを提供する中国メーカーの参入、Googleが100ドルスマートフォンAndroid Oneをインドで発売など、安売り競争に陥る要因は枚挙にいとまがない。

さらに今後もGoogleは2014年末までにインドネシア、フィリピン、その他の南アジア各国へ、2015年にはさらに多くの国々でAndroid Oneデバイスを展開していく計画ということで、この状況を見てると、スマートフォン市場自体には参入せず、OS提供に特化し、モトローラも買収後、特許と先端研究部門だけを吸収してすぐに売却したGoogleの慧眼が光る。そして、デバイスの衰退期に入ったタイミングで、最も安くスマートフォンを生産できる企業と組んで、途上国でのシェアをがっちり確保する。スマートフォンのシェアさえ確保しておけば、安売りに参入できないAppleが入ってくることはないし、ある程度広告市場が大きくなれば、そこから利益を吸い上げれば良い。まさにプロダクトのライフサイクルを利用した横綱相撲だ。

これから、すごく難しい局面に入るSamsungだが、スマートフォン市場自体が非常に難しい局面に入るのは確定なので、本当はここから差別要因をアピールしていかなければならないのだが、OS/エコシステムを自前で抱えていないので、決算システムのようなOSネイティブに密接に絡んでくる部分の発展を自前で行うのは非常に難しい。

全てを自前で抱えるApple/OS・エコシステムだけを抱えるGoogle/デバイスだけを抱えるSamsungのビッグプレイヤーの動きがいよいよ激しくなってくる部分なので、それぞれがどのような動きをしてくるか、見ている分には非常に面白い展開になってきている。

なお、もちろんSamsungがこのまま終わるわけはなく、スマートフォンの会社から「超一流総合プラント会社」への変貌を狙っている。この試みが成功するのが先か、スマートフォン市場での失速が先か、そのあたりの動きも非常に興味深い。

サムスン重工業とサムスンエンジニアリングが合併を決議した9月1日、サムスングループの役員は合併背景の説明において、「時間は本当に限られている。“ゴールデンタイム”を逃せばおしまいだ」と発した。正に、機会を喪失しないためのスピード経営である。 これに伴い、両社は海上と陸上をすべてカバーできる「超一流総合プラント会社」への飛躍することを表明した。 事業規模で2013年の約2.5兆円から2020年には4兆円に達する超大型総合プラント会社に成長するという展望である。