ちょっと前の記事だが、以下の記事がおもしろかった。
これまでPCではWebブラウザのクッキー主体で行っていたユーザートラッキングを、モバイルファーストからモバイルオンリーにシフトしていくなかでどのように行っていくか、というGoogle/Apple/Facebookの戦略がかいま見える良い記事。
Google vs Apple
まず、上の記事の理解として重要なのが、広告が主な収入源のGoogle/Facebookと違って、Appleは基本的には広告を主な収入源としておらず、デバイスを売ることが主な収入源であること。このことに関しては、以下の記事がおもしろくて、MSのCEOサティア・ナデラが以下のように述べている。
私はApple、Google、Microsoftがそれぞれを何をする会社なのかと考えることがある。それぞれの会社は独特の特長を持っている。簡単な言葉で要約するなら、こうだろう。私の見るところ、Appleの本質は特にはっきりしている。それはティム・クック自身が最近、明快に定義したとおり、Appleはデバイスを売る会社だ。それがAppleの本質だ。Googleはデータの処理と広告の販売を本質とする会社だ。Googleのビジネスはユーザーに不快感を与えずに広告を表示できる能力にかかっており、その点のGoogleの仕事ぶりは文句のつけようがない。
つまり、Appleは、iAdにも力を入れているものの、現時点では広告による利益最適化よりも、よりデバイスを利用するユーザーの利益を重要視する必要、すくなくともそのポーズを取る必要がある。余談だが、この部分って結構面白くて、逆に言うとApple側は古いデバイスを陳腐化(過去のiPadではiOSの最新版がイマイチきちんと動かない、など)させる施策を取ることが利益の最適化につながるが、広告をメインとするGoogleにはそのモチベーションがないなど、今後のOSの施策において、このあたりの企業のポジションによる差異は結構大きくなってくるのではないかと思う。
あて、この広告による利益最適化がAppleにとって最優先事項ではないというポイントは、AppleのApple Payの動きにもみてとれる。Apple Payが、ユーザーの購入ログを取得しないと表明したことは、かなり驚きをもって迎えられたが、このような動きからも分かる通り、Appleの現在のスタンスは「ユーザーのプライバシーを守る」という方向、少なくともそのようなスタンスを取る方向に伸びており、広告を主な収入源とするGoogle/FacebookのどのようなケースでもSSOに結びつけ、ユーザーの行動をトラックし、適切な広告を差し込むというモチベーションとは相反する。この考え方がiOSでクッキーが滅ぼさられ、代わりに広告のトラッキング専用のIDであるIDFA(Identifier For Advertisers、このIDはユーザーが自分の意思で事業者ごとにIDをオプトアウト可能)が導入された背景にある。
Google側がAndoridに注力する理由もまさにこれで、OSレイヤーでブロックされると個人のトラッキングなんて不可能なので、GoogleにとってはAndroidのようなGoogleにつねにログインしていることを半強制するシステムがまさに将来のために必須だったわけだ。この、無理に広告を頑張る必要がないとAppleと絶対に広告事業を譲れないGoogleという図式がそのままiOSとAndroidの方向性を理解する上で役立つと思う。
Facebookが好調な理由
また、現状モバイルのシフトがうまく言っていると言われるFacebookがどうしてモバイル広告でうまくいっているかを理解する上でも上の記事は非常に役に立つ。フェイスブックは第3四半期において、59%増収を果たしたが、それはモバイル広告が好調だったことが大きな理由である。
この好調な理由を簡単にいうと、クッキーが個人のトラッキングに利用できない状況となるシフトの中で、最もうまく個人をトラッキングできる状況にあるのがFacebookだったというわけだ。この点は非常に重要で、みんな知っての通り個人の属性・行動(必ずしも個人をトラッキングする必要はない)をトラッキングできるということが、現状のモバイル広告事業の要なわけだが、Facebookのタイムラインに全てが集約され、そのタイムラインの行動からユーザーの指向を取得し、タイムライン上に広告が他のポストと同等に表示されるという構造自体が、まさにOSレイヤーのプラットフォームに依存しないシステムだったわけだ。
なので、今後のFacebookの施策は明確で、ひとつはFacebookのタイムラインでトラッキングしたデータを利用して、Facebook外部に広告ネットワークを構築すること。もう一つは、よりタイムラインでできることを増やし、全てのユーザーの必要なアクションをFacebookにサインインした状況で可能とすること。この目的を考えるとInstagramとWhatsAppをきちんとあのタイミングで抑えておいたのは、将来の布石としてかなり効いてくるのだろうな、と思う。
このあたりの動きは非常に激しく、おもしろいので、今後もWatchしていきたいところです。