相変わらずバタバタとしているのですが、年末にすこしだけ時間を見つけて読みたかったこの本を読んでみた。
この本は、社会がどのように変わっていくかを12のポイントでまとめているのだが、「COGNIFYING」の章で、テクノロジーの浸透に関して、そのステップにかんして以下のようなフローの記述があった。
- ロボットやコンピュータに僕の仕事などできはしない。
- OK、かなりいろいろとできるようだけれど、僕なら何でもこなせる。
- OK、僕にできることは何でもできるようだけれど、故障したら僕が必要だし、しょっちゅうそうなる。
- OK、お決まりの仕事はミスなくやっているが、新しい仕事は教えてやらなきゃいけない。
- OKわかった、僕の退屈な仕事は全部やってくれ。そもそも最初から、人間がやるべき仕事じゃなかったんだ。
- すごいな。以前の仕事はロボットがやっているけれど、僕の新しい仕事はもっと面白いし給料もいい!
- 僕の今の仕事はロボットもコンピュータもできないなんて、すごくうれしい。
- [以下、これを繰り返す]
これまでも上のようなことはたくさんおきてきたが、これからの将来、このような流れがもっとたくさん現れてこれまで「人間の仕事」と定義されていたものがAIやロボットのしごとになっていくと筆者のケヴィン・ケリーはいう。たとえば、今日の以下のニュースなどはとてもわかり易い例で、この手のデータに近しい部分をAIは人間より上手くやってくれる。このフローのスピードがだんだんあがっていき、おそらく10年後にある仕事は、今存在する仕事からはだいぶ違った形になっていると思う。
この「XXを人間ではなくAIにやらせよう」というテーマをどこに当てていくかというのが、僕も2016年の大きな仕事になった。最終的に僕はAlpacaというスタートアップでXXにトレーディングを選んだわけだが、これから5年くらいはAIが社会に浸透していく上でのテーマになっていく。一時期AI界隈で話題になった、日立の汎用AIの動画を見てみよう。
人工知能 Hitachi AI Technology/H, Hitachi AI Technology/H - Hitachi
この動画は結構AI界隈のスタートアップが集まるとネタになっていたのだが、shi3zさんのエントリーでも書いたけど、お会いしたときPFNの丸山先生は非常にお怒りだった。
僕なんかだと、要はこの動画はIT化すればある程度、業務改善できますよという日立のソリューションを「汎用人工知能」と名前をつけているだけで、そこまで怒らなくてもいいのではと思っていたのだが、丸山先生の言っていることはごもっともである。もともとWatsonがこれに近しい売り方をしていて、IBMの既存ソリューションをWatsonという人工知能ブランドとしてマーケティングしているわけなのだが、IBMは裏に実際にそごいのがあるのかも、、、しれない。
ただ、この「XXをAIにやらせよう」というのは、ちょっと深掘りするポイントなので、僕の経験もあわせて少し考えてみた。
いったい何を学習の元のデータにするつもりなのか
まずは「いったい何を学習の元のデータにするつもりなのか」が重要だ。基本的にはディープラーニングを含む機械学習全般はまずデータありきである。なにを利用して学習させるか、そのデータにそもそも抽出・発見できる何かがあるのか、という部分をクリアする必要がある。この部分で、伝統的にIT投資をあまりしてなかったケースが多く、DBとしてこれまでやってきたことを記録していないことが多い。特に、システム部門がプロフィットセンターの意思決定をサポートする気概がない場合、この部分でデータをだすことや、データの保存そのものに問題が多いことが多い。
そもそも置き換える仕事はメインのしごとなのか
人間の仕事というのは、分解してみるとそのメインのしごとは全体の3割くらいで、じつはほかの7割くらいのことに時間を取られていましたというのは全然珍しくない。というかそれが主流だ。Alpacaがやっているトレーディングも、このあたりの問題があって、トレーディングに利用している時間は業務の半分以下で、トラックレコードの記録、顧客対応などトレードの意思決定以外の部分に時間を使っている。
ラストワンマイルをクリアできるのか
この場合のラストワンマイルというのは、物理的なラストワンマイルと精神的なラストワンマイルの両方がある。物理的なラストワンマイルは、フローのなかでどうしても物理的な対応が必要だったり、なにか電子化されていない箇所があったり、理由は様々に考えられる。精神的なラストワンマイルは、簡単にいうと抵抗勢力の存在だ。最初に書いたフローのとおり、AIの導入は最初は「OK、かなりいろいろとできるようだけれど、僕なら何でもこなせる。」のステップになるのだから、ここではいくらでも問題点をあげることができる。ここで躓くと多くの場合AIは次の一歩に進めない。
置き換えるモノが企業・人間にとってどれくらい割に合わないか
そして最後のポイントが置き換えるモノが企業・人間にとって割に合わないかである。簡単にいうと、AIが置き換えるタスクは時間単価が高いほど置き換えるビジネスプライオリティが高い。ただし、ここで気をつける必要があるのは、AIは疲れないという点で、たとえば画像認識は人間ならほぼだれでもできるが、これが店舗全体を常に見ているという話になった途端、人間にとってはとてもやりたくない仕事になる。つまり、質と量の問題があり、質も重要だが、もし量があることでできることが変わるのであれば、量を積むことで質にすることができる。
そんなことをつらつらと考えながら読んだわけですが、2016年はこのあたりでとてもたくさん勉強させてもらいました。たぶん、2017年はもっともっとこのような問題にぶち当たるとおもうので、一つ一つクリアしていって、AlpacaでもAIをトレーディングの領域に適用していきたいものです。